真・最強メンタル計画V2(VRライブ支援装置)
── 研究者スイッチ ──
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ。
深夜の寮室に、キーボードを叩く音だけが響いていた。
机の上には、開きっぱなしのノート。
赤文字だらけの旧・最強メンタル計画ノートではない。
新品の、真っ白だったはずのノート。
その表紙には、堂々とこう書かれていた。
『真・最強メンタル計画』
そして、次のページ。
『V2:VRライブ支援装置』
パソコンの前に座る一人のウマ娘は、鬼気迫る表情で画面を睨みつけていた。
目は血走っている。
髪は少し乱れている。
机の端には空になった栄養ドリンクの瓶が二本。
しかし、その表情に疲労はなかった。
あるのは、使命感。
そして、根拠のない自信。
「……ここを、もう少し自然にして……」
画面の中では、立体化されたステージが回転していた。
観客席。
ライト。
音響。
そして、中央に立つ人物。
スピカさん。
もちろん本人ではない。
公式から提供されたライブ映像を元に、彼女が頑張って再構築した、VR用の立体モデルである。
旧V2。
かつて彼女が作ったVRライブは、失敗した。
いや、技術的には失敗していなかった。
むしろ、あれは可能性の塊だった。
視覚。
聴覚。
ライブ体験。
没入感。
そこまでは間違っていなかった。
問題は、余計なことをしたことだった。
ランダムファンサ。
距離設定。
ガチ恋距離。
突然の投げキッス。
その結果、実験者本人は幸せそうに気絶した。
回収した同室の子は頭を抱えた。
たづなさんは胃を押さえた。
理事長は金庫を増設した。
だから今回は違う。
「今回は、絶対に違う……!」
彼女は強く頷いた。
今回の目的は、環境化ではない。
真V1は、日常に溶け込ませる応援音声だった。
けれど、真V2は少し方向性が違う。
ライブに行けないウマ娘のため。
怪我で走れないウマ娘のため。
レースに勝てなかった子のため。
現地に行く体力も気力もない子のため。
スピカさんのライブを、ただ画面で見るだけではなく。
本当にそこにいるように感じられる支援装置。
走れない日でも。
泣いている日でも。
自分の部屋で、ベッドの上で、椅子に座ったままで。
少しだけ前を向けるように。
そういうものを作りたかった。
理由は、本当に素敵だった。
理由だけなら、誰も止めなかった。
実際、企画書も通った。
タイトルはこうだ。
『怪我・療養・遠隔地等によりライブ参加が困難な生徒向けの、没入型映像支援装置の試験開発について』
真面目だった。
とても真面目だった。
なお、その中に「スピカさんの立体化モデルを本人並みにリアルにする」とは書かれていなかった。
書いていたら通らなかったかもしれない。
「でも、目的は支援だから……!」
彼女は自分に言い聞かせるように呟いた。
旧V2の反省点は、しっかり把握している。
まず、シルエット表現。
あれは駄目だった。
輪郭だけ見せることで、逆に想像が補完してしまった。
見えない部分を脳が勝手に完成させた。
結果、破壊力が上がった。
次に、ランダムファンサ。
あれも駄目だった。
どこで何が来るかわからない緊張感。
自分だけに向けられているように感じる演出。
視線。手振り。投げキッス。
全部駄目だった。
だから今回は、公式映像そのまま。
スピカさんが公開しているライブ映像。
誰でも見られるもの。
すでに世に出ているもの。
つまり、安全。
「安全ヨシ」
彼女は画面を指差した。
そして、もう一度頷く。
「立体化してるだけだから、ヨシ」
ヨシではなかった。
しかし、彼女はまだそれに気づいていなかった。
普通なら、簡易的なステージ再現でよかった。
遠くからスピカさんの姿が見える程度でよかった。
療養中の子が「あ、ライブだ」と感じられれば、それで十分だった。
けれど彼女は思った。
どうせなら、本格的にしたい。
どうせなら、現地に行けない子にも本物に近い体験を届けたい。
どうせなら、音響も、照明も、距離感も、空気感も、できるだけ再現したい。
そうして彼女は、独学で3D技術を学んだ。
ステージを作った。
ライトを作った。
観客席を作った。
音の反響を調整した。
カメラ位置を調整した。
スピカさんの動きを立体化した。
表情の変化も再現した。
髪の揺れも再現した。
衣装の布の動きも再現した。
研究者スイッチが入っていた。
作っている間の彼女は、恐ろしく冷静だった。
「ここのターン、もう少し滑らかに……いや、本人の動きはもっと軽い。ここ違う。修正」
冷静だった。
「この角度だと顔が少し違う。スピカさんはここで、もっと優しく笑う。駄目。作り直し」
冷静だった。
「この手の振り方、観客全体へ向けている。個人ファンサではない。だから安全。安全にするためにも正確に再現する必要がある」
冷静だった。
とても冷静だった。
冷静なまま、自分の首を絞めていた。
── 完成、そして三秒 ──
朝焼けが窓の外を薄く染め始める頃。
「……できた」
彼女は、満足げな表情で呟いた。
画面の中には、完成したVRライブ支援装置の起動画面が表示されている。
『真・最強メンタル計画V2
遠隔ライブ体験支援システム
Ver.1.00』
その下に、小さく注意書き。
『過度な没入を避けるため、初回は短時間の使用を推奨します』
彼女はそれを見て、満足げに頷いた。
「ちゃんと注意書きも入れた。えらい」
成長していた。
たしかに成長していた。
旧Vシリーズの頃なら、注意書きなど入れなかった。
今回は違う。
万が一に備える。
倒れても怪我をしない場所で実験する。
再生時間も短め。
音量も普通。
ランダムファンサなし。
過剰な近距離演出なし。
公式映像ベース。
「……よし」
彼女はVRゴーグルを手に取った。
そして、ベッドへ移動する。
枕の位置を整える。
布団を少しどかす。
倒れても大丈夫なように、周囲に硬いものがないか確認する。
「今回は、前と違う。支援装置。メンタルケア。療養中の子のため。怪我した子のため。現地に行けない子のため」
彼女は深呼吸した。
ベッドに仰向けになる。
VRゴーグルを装着する。
手元のコントローラーを握る。
「では、試験開始」
ぽち。
暗転。
そして、音が聞こえた。
ざわめき。
会場の空気。
遠くの拍手。
照明が落ちる前の、あの独特の期待感。
「……おお」
彼女は小さく声を漏らした。
成功している。
ステージが見える。
観客席が見える。
自分は、ちょうど中央少し後ろの席に座っているような位置だ。
近すぎない。
遠すぎない。
旧V2で問題になった最前列やガチ恋距離ではない。
健全。
安全。
そして、ステージに光が差した。
スピカさんが現れた。
こちらへ向けて、優しく笑った。
「――」
彼女の意識は、そこで消えた。
あまりにも早かった。
開始から三秒。
歌が始まる前だった。
ファンサもない。
投げキッスもない。
近距離でもない。
公式映像そのまま。
ただし、立体だった。
ただし、リアルだった。
ただし、そこにいるように見えた。
研究中は平気だった。
画面の中でモデリングしている時は平気だった。
角度を調整している時は平気だった。
動きを修正している時は平気だった。
その時の彼女は、開発者だった。
研究者だった。
スピカさんのライブを安全に届けるための、技術者だった。
しかし完成した瞬間。
スイッチが切れた。
彼女はただのウマ娘に戻った。
スピカさんの歌と言葉と笑顔に、脳を焼かれている一人のウマ娘に戻った。
耐性はゼロだった。
むしろ、制作期間中に溜め込んだ反動でマイナスだった。
ベッドの上で、彼女は幸せそうに気絶した。
VRゴーグルを装着したまま。
両手でしっかり押さえたまま。
口元には、満ち足りた笑み。
そしてシステムは、丁寧に作られていた。
倒れても停止しないように。
療養中の子が寝たまま見られるように。
視線操作がなくても、自動でライブが進むように。
つまり。
彼女が気絶しても、ライブは続いた。
優しい歌声が、部屋の中に小さく漏れていた。
── 同室の子、帰宅 ──
そして夕方。
「ただいまー」
同室の子が、部屋の扉を開けた。
そして、固まった。
「…………」
ベッドの上。
VRゴーグルを装着したまま。
両手でそれを守るように押さえ。
幸せそうな顔で気絶している友人。
机の上には、新品だったはずのノート。
開かれたページには、大きな文字。
『真・最強メンタル計画V2』
同室の子は、ゆっくりと息を吸った。
「…………また?」
声には、驚きがなかった。
あったのは、疲労だった。
いつぞやに見た光景。
旧V2。
VRゴーグル。
幸せそうな気絶。
外そうとしたら抵抗。
頭を抱える自分。
あの時と同じ。
いや。
「……なんか、前よりしっかり掴んでない?」
同じではなかった。
同室の子は、そっとベッドへ近づいた。
友人の肩を揺らす。
「起きて。ねえ、起きて」
「……すぴ……か……さん……」
「駄目だ」
一瞬で判断した。
完全に駄目な状態だった。
同室の子は、まず音を確認する。
小さく漏れるライブ音。
激しいものではない。
普通の音量。
むしろ、心地よいくらいだ。
だからこそ危ない。
刺激としては強くない。
でも、本人にとっては致命傷。
同室の子は、慎重にVRゴーグルへ手を伸ばした。
「はい、外すよー」
その瞬間。
気絶しているはずの友人の手に、力が入った。
がしっ。
「……っ、強っ!?」
同室の子は顔を引きつらせた。
旧V2の時も抵抗はあった。
だが今回は違う。
明らかに強い。
両手でゴーグルを押さえ込み、指先に本能的な力が入っている。
まるで、命綱を守るように。
「映像クオリティ上がったせいで、抵抗力も上がってる……!」
同室の子は理解した。
見えているのだ。
気絶していても。
意識がなくても。
目の前にスピカさんがいると、本能が認識している。
だから外されたくない。
幸せな夢から覚めたくない。
その結果、無意識の抵抗が旧V2より強化されている。
「成長するところ、そこじゃないんだよ……!」
同室の子は、友人の指を一本ずつ外そうとした。
しかし、外れない。
「ちょっと、離して。離しなさい。これは駄目なやつ。絶対駄目なやつ」
「……らいぶ……いけない子にも……」
「理由は良い! 理由は本当に良い! でも今あなたがそれで倒れてる!」
返事はない。
ただ、幸せそうな寝息だけが聞こえる。
同室の子は机の上のノートを手に取った。
ぱらぱらと読む。
『目的:怪我や療養等でライブ参加が難しいウマ娘への精神的支援』
「うん、良い」
『旧V2の反省:シルエットは想像補完が起こるため危険』
「うん、学んでる」
『対策:公式映像をそのまま使用。ランダムファンサなし。個人向け演出なし』
「うん、すごく学んでる」
『追加要素:頑張って習得した3D技術により、立体感と臨場感を大幅向上』
「ここ」
同室の子は、そこを指で押さえた。
「ここだよ」
問題は、そこだった。
彼女は学んでいた。
反省していた。
安全対策もしていた。
でも、良いものを作ろうとしすぎた。
支援装置としての完成度を上げすぎた。
結果、本人に直撃した。
同室の子は深くため息をついた。
「ほんと、悪い子じゃないんだよね……」
むしろ、優しい。
方向性が毎回おかしいだけで、根っこの理由はいつも優しい。
怪我した子に届けたい。
走れない子を支えたい。
ライブに行けない子にも希望を届けたい。
だから、怒りづらい。
怒るけど。
「怒るけどね」
同室の子は覚悟を決めた。
まず、VR本体の電源を探す。
ゴーグルを直接外すのは難しい。
ならば映像を止める。
しかし問題があった。
電源ボタンは、ゴーグルの側面。
つまり、友人の手の下。
「……守りが堅い」
気絶しているくせに、防御が完璧だった。
仕方なく、同室の子はパソコン側へ移動した。
ケーブルを辿る。
接続状態を確認する。
画面を見る。
そこには、ライブが再生されていた。
スピカさんがステージの上で歌っている。
遠すぎず、近すぎず。
優しく、力強く。
観客全員へ向けて歌っている。
同室の子は、思わず一瞬見入った。
「……あ」
危ない。
彼女はすぐに目を逸らした。
「私まで見るな。私まで見るな」
画面越しでも少し危ない。
VRで見たら、たしかに危ない。
同室の子は、マウスを動かす。
停止ボタンを探す。
しかし、そこに表示されていたのは。
『療養中の使用者が誤って停止しないよう、三秒長押しで停止します』
「変なところで配慮が細かい!」
同室の子は停止ボタンを長押しした。
三秒。
長い。
画面の中のスピカさんが笑う。
「見ない見ない見ない」
停止。
音が消えた。
部屋が静かになった。
ベッドの上の友人の手から、少しだけ力が抜けた。
「今だ!」
同室の子は素早く戻り、VRゴーグルを外そうとした。
だが。
「……すぴかさん……」
ぎゅっ。
「まだ抵抗するの!?」
映像は止まっている。
音も止まっている。
なのに、彼女は離さない。
余韻。
残像。
記憶。
それだけでまだ守っている。
「どれだけ幸せだったの……」
同室の子は呆れながらも、少しだけ笑ってしまった。
そして、友人の耳元で言った。
「起きたら、ちゃんと続きを作る前に私に見せること。あと、たづなさんにも報告。いい?」
「……つづき……つくる……」
「そこだけ反応しない」
結局、ゴーグルを外すのに五分かかった。
片手ずつ指を外し。
布団で腕を固定し。
隙を見てゴーグルを上へずらす。
外れた瞬間、友人は少し寂しそうな顔をした。
気絶したまま。
「……そんな顔しないでよ」
同室の子はため息をついた。
── 赤ペン先生、再び ──
ゴーグルを机に置く。
パソコンをスリープ状態にする。
ノートを閉じる。
そして、椅子に座った。
ベッドの上では、友人が幸せそうに眠っている。
まるで、とても良い夢を見ているように。
同室の子は、その顔を見てしまう。
「……本当に、悪いものじゃないんだよね」
目的は、良い。
技術も、すごい。
必要としている子も、きっといる。
怪我をして、レースから離れて。
ライブにも行けなくて。
画面越しにしか応援を受け取れない子がいるなら。
この装置は、きっと支えになる。
ただし。
「使用者が倒れないようにしないとね……」
同室の子は、ノートを開いた。
赤ペンを取り出す。
もはや習慣だった。
彼女はページの下に、丁寧な字で書き込んだ。
『赤ペン先生より』
『目的は非常に良い。旧V2の反省もできている。ランダムファンサを消した点は大きな成長』
『ただし、3D化の精度が高すぎる。現状では支援装置ではなく、気持ちよく意識が飛ぶ装置』
『初回起動時にスピカさんを正面から出すのは禁止。段階的に会場、ステージ、照明、遠景から慣らすこと』
『使用者が気絶した場合、自動停止する機能を必ず入れること』
『停止ボタンを三秒長押しにするのは療養者配慮としては分かるが、救助者にも優しくすること』
『あと、自分で試す時は事前に私を呼ぶこと』
そこまで書いて、同室の子は少し迷った。
そして、最後に一文を追加した。
『でも、これを必要としている子はいると思う。だから、ちゃんと安全に作ろう』
赤ペンを置く。
ベッドの上で、友人が小さく寝返りを打った。
「……すぴかさん……すごい……」
「うん。すごいね」
同室の子は苦笑した。
「でも、あなたもすごいよ」
技術力も。
行動力も。
優しさも。
全部すごい。
ただ、方向が毎回危ないだけで。
── 目覚め ──
しばらくして、友人がゆっくり目を覚ました。
「……あれ?」
「おはよう」
「……実験は?」
「成功と失敗」
「どっち!?」
「技術は成功。安全性は失敗」
「ああ……!」
彼女は頭を抱えた。
どうやら自覚はあるらしい。
同室の子はノートを差し出した。
「赤ペン入れといた」
「ありがとう……」
彼女は素直に受け取った。
そして、赤文字を読み進める。
途中までは真剣に頷いていた。
「段階的に会場から……なるほど」
「うん」
「自動停止機能……たしかに」
「うん」
「救助者に優しく……ごめん」
「本当にね」
そして最後の一文で、彼女は止まった。
『でも、これを必要としている子はいると思う。だから、ちゃんと安全に作ろう』
彼女は、ノートをぎゅっと抱きしめた。
「……うん」
その声は、少しだけ震えていた。
「ちゃんと作る。今度こそ、ちゃんと」
「うん」
「怪我した子とか、走れない子とか、ライブ行けない子が……少しでも元気になれるように」
「うん」
「だから、次はもっと安全にする」
「うん」
「まずは起動時に、遠くの観客席から始めて……」
「うん」
「段階的に近づけて……」
「うん?」
「最終的に自然な距離感でスピカさんを――」
「待って」
同室の子は、真顔で止めた。
「段階的に近づける方向で考えない」
「えっ」
「近づくな」
「でも、現地感が」
「近づくな」
「……ん」
彼女は正座した。
ベッドの上で。
同室の子は深くため息をついた。
まだ先は長い。
とても長い。
そして机の上。
ノートの次ページには、すでに薄く下書きがあった。
『V2.1 改修案』
同室の子はそれを見つけ、額を押さえた。
「……今日中に書くのは禁止」
「えっ」
「禁止」
「じゃあ、明日」
「反省して」
彼女は少し考えた。
そして、真剣な顔で言った。
「……反省しながら、明日」
「そういうところだよ」
掲示板:【速報】真・最強メンタル計画V2、またVRらしい【支援装置】
レス 1〜50
真V2来たってマジ?
来た
また?
また
真V1からそんな経ってないんだけど???
開発速度おかしいんだよなぁ
今回はVRらしい
解散
旧V2で見た
旧V2で見た光景
またゴーグル外せなくなるやつじゃん
でも今回は目的がちゃんとしてるらしい
目的だけは毎回ちゃんとしてる定期
いや今回は本当にちゃんとしてる
怪我とか療養とかでライブ行けない子向けの支援装置
えっ普通に良いじゃん
理由は素敵
理由は
理由は、な
なんで理由が素敵だと不安になるんだろう
過去実績
信用がある
悪い意味で
今回の問題点
公式ライブ映像を頑張って3D化した
あっ
あっ
それは駄目だろ
駄目っていうか
よくできたな???
技術力が普通に高いんだよ
なんでその才能を毎回危険物に使うの?
本人は危険物作ってるつもりないから……
支援装置なら最初に自分が気絶するな
今回も本人が試したの?
念のためベッドに転がってから起動したらしい
成長してる
ちゃんと倒れても大丈夫な環境にしてるの偉い
なお開始三秒
歌始まった?
始まってないらしい
スピカさんがステージに出てきて笑った瞬間、気絶
わかる
わかるけど駄目
開発中は平気だったんでしょ?
研究者モードなら平気
完成したらただのウマ娘に戻る
研究者スイッチ強すぎるだろ
そして切れた瞬間耐性0になるの面白すぎる
耐性0じゃない
反動でマイナス
蓄積ダメージ方式やめろ
開発中にスピカ成分を浴び続けた分、完成時に一括請求された?
請求額が高すぎる
幸せ破産してる
それはちょっと羨ましい
羨ましがるな
でも怪我でライブ行けない子向けって考えは本当に良いよね
レス 51〜100
そこが厄介なんだよ
止めづらい
悪意ゼロ
善意100
安全性20
安全性20もある?
旧シリーズよりはある
比較対象が悪い
開発担当:最強メンタルちゃん
品質保証:同室の子
封印担当:たづなさん
好奇心担当:理事長
最後いらない
いると事故る
いなくても事故る
詰み
問題児ちゃん、技術力だけなら普通に企業から声かかりそう
3D、音響、UI、事故時配慮、企画書作成
普通に強い
同室の子をセット販売するな
赤ペン内容
・目的は良い
・反省もできてる
・ランダムファンサ消したのは成長
・3D精度が高すぎる
・現状は支援装置ではなく気持ちよく意識が飛ぶ装置
・初回起動でスピカさんを正面から出すな
・自動停止機能必須
・救助者にも優しくしろ
・自分で試す時は事前に呼べ
完璧
赤ペン先生有能
あの子もう同室の子じゃなくて安全審査部門だろ
最強メンタル計画専属監査役
給料出してあげて
報酬:胃痛
ブラックすぎる
でも今回は本当に実用化してほしい気持ちある
わかる
安全版なら普通に使いたい
スピカさんが優しく笑う
↓
心が満たされる
↓
器が耐えられない
↓
気絶
器を鍛えるのが最強メンタル計画だから……
目的に対して原因が強すぎる
でも本当にさ
ライブ行けない時にこれあったら泣くと思う
怪我で寮から出られない時とか、画面越しでもきついのに
そこにいるみたいに感じられたら絶対支えになる
結局気絶じゃん
でも今回は悪い気絶じゃないから……
良い気絶と悪い気絶を分けるな
同室の子、停止ボタン押そうとしたら三秒長押し仕様だったの好き
療養者が誤操作しないようにって配慮らしい
配慮が細かい
救助者に優しくない
赤ペン案件
真V2.1の改修案もう出てるって聞いた
倒れてから起きてすぐ?
反省しながら改修するタイプ
同室の子「今日中に書くのは禁止」
問題児「じゃあ明日」
このメンタルは本当に最強なのでは?
実際、失敗しても折れないから最強
方向が毎回スピカさんに向かって突撃してるだけで
赤ペン先生が伴走してるから大丈夫
大丈夫かなぁ
大丈夫ではないけど、たぶん前よりは大丈夫
この絶妙な信頼感
真V2.1、報告待ち
待つな
待ってしまうんだよなぁ
── 改修決定 ──
その夕方。
問題児の元へ、一通の連絡が届いた。
『真V2について。目的と技術は評価します。
ただし現行版は使用禁止。
安全改修案を添えて、改めて提出してください。
なお、次回試験は必ず監督者同席のもと行います。
駿川たづな』
それを読んだ彼女は、ぱあっと顔を輝かせた。
「評価された……!」
横で見ていた同室の子は、すぐに釘を刺した。
「使用禁止って書いてあるよ」
「でも改修していいって!」
「監督者同席って書いてあるよ」
「一緒に見てくれるってことだね!」
「前向きすぎる」
同室の子は、深くため息をついた。
そして赤ペンを取り出す。
「じゃあ、まず改修案。起動時にスピカさんを出さない」
「うん!」
「遠景から」
「うん!」
「近づけない」
「……うん」
「今、間があった」
「なかった」
「赤ペン増やすよ」
「ありました」
こうして、真・最強メンタル計画V2は封印された。
正確には、封印ではない。
再審査待ち。
危険物から、支援装置へ。
ほんの少しだけ、道が見えた。
── 病室のライブ ──
走れない。
その事実は、思っていたよりずっと重かった。
脚はある。
感覚もある。
治る見込みも、あるらしい。
医者はそう言った。
時間をかければ。
焦らなければ。
リハビリを続ければ。
また走れる可能性は高い、と。
それは、きっと良い知らせだった。
でも、今の私には少し遠すぎた。
窓の外では、夕方の空が薄い橙色に染まっている。
病室の白い天井。
消毒液の匂い。
規則正しく聞こえる機械の音。
廊下を歩く誰かの足音。
ここには、土の匂いがない。
風を切る音もない。
蹄鉄が地面を叩く感覚もない。
隣を走る誰かの息遣いもない。
レース場は、遠い。
トレセンも、遠い。
私は、ここにいる。
ベッドの上に。
みんなはどうしているだろう。
練習しているだろうか。
次のレースへ向かっているだろうか。
私は。
私は、何をしているんだろう。
「……もう、いいのかな」
小さく呟いた声は、自分でも驚くほど乾いていた。
その時、病室の扉がノックされた。
「失礼します」
入ってきたのは、駿川たづなさんだった。
その後ろに、医療スタッフと、見慣れない機材ケース。
「体調はいかがですか?」
「……大丈夫です」
私は反射的に答えた。
たづなさんは、少しだけ目を細めた。
責めるような顔ではなかった。
ただ、わかっているような顔だった。
「今日は、試験導入のお願いに来ました」
「試験……?」
「遠隔ライブ体験支援システムです」
その言葉に、私は少しだけ顔を上げた。
ライブ。
その単語だけで、胸の奥がかすかに動いた。
「スピカさんのライブ映像を、病室でも安全に見られるように改修したものです。もちろん、無理にとは言いません」
スピカさん。
その名前を聞いた瞬間、指先が少し震えた。
画面越しに何度も見た。
歌を聞いた。
言葉に救われた子たちの話も聞いた。
でも、最近は見られなかった。
見たら、思い出してしまうから。
走りたかった自分を。
諦めたくなかった自分を。
まだ前を向いていた頃の自分を。
「……私、見てもいいんですか」
「もちろんです」
「でも、私……今、走れてないです」
口にした瞬間、喉が詰まった。
「ライブを見たら、頑張れって言われてるみたいで……でも、今の私は頑張れなくて……」
言葉が崩れていく。
「みんなは走ってるのに、私はここで寝てるだけで……こんな私が見ても、いいのかなって」
たづなさんは、すぐには答えなかった。
ゆっくりと椅子に座り、私の目線に合わせてくれた。
「走れない時間も、あなたの時間です」
「……」
「止まっているように見えても、治すことも、休むことも、また前を向く準備も、全部あなたの道の一部です」
優しい声だった。
「だから、見てもいいんです。むしろ、今のあなたにこそ届いてほしいと思っています」
私は、布団を握った。
泣きそうだった。
でも泣かなかった。
ゴーグルを装着する。
少し暗くなる。
怖い。
けれど次の瞬間、目の前に広がったのは、静かな会場だった。
まだ誰もステージにいない。
遠くの照明。
広い客席。
開演前のざわめき。
ああ。
私は、息を呑んだ。
レース場とは違う。
病室でもない。
でも、そこには確かに熱があった。
誰かを待つ空気。
これから何かが始まる気配。
忘れていた感覚だった。
何かを待つこと。
明日を少し楽しみにすること。
それだけで、胸が苦しくなった。
照明が少しずつ落ちる。
ステージに光が差す。
遠くに、人影が見えた。
スピカさんだ。
まだ遠い。
表情までは見えない。
けれど、そこにいる。
それだけで涙が出た。
歌が始まる。
スピカさんの歌は、病室の白い壁を壊すように聞こえた。
走れ、と言っているわけじゃなかった。
勝て、と言っているわけでもなかった。
今すぐ立て、と責めているわけでもなかった。
ただ。
あなたが夢を見たことは、無駄じゃない。
今そこにいるあなたも、置いていかれてなんかいない。
そんなふうに聞こえた。
私は泣いた。
声を殺して泣いた。
悔しかった。
まだ走りたかった。
「……戻りたい」
小さく言えた。
久しぶりに、言えた。
その瞬間、胸の奥に固まっていた何かが、少しだけ溶けた気がした。
スピカさんは、遠いステージの上で歌っている。
みんなへ向けて歌っている。
だからこそ、受け取れた。
走っている子も。
負けた子も。
怪我をした子も。
今は立ち止まっている子も。
同じ場所にいていいのだと。
そう思えた。
「……もう少し」
自分でも驚くくらい、はっきり言えた。
「もう少し、見たいです」
視点が、少しだけ前へ移る。
ステージが近くなる。
スピカさんの姿が、さっきよりはっきり見える。
息を呑む。
胸が跳ねる。
でも、怖くはなかった。
苦しいけれど、温かい。
今度は別の曲だった。
前へ進む歌。
まだ終わっていないと、背中を押す歌。
私は、泣きながら笑っていた。
もう一度、リハビリを頑張ろう。
明日、ちゃんと先生に聞こう。
焦らずにやれることを。
同室のみんなに返事を書こう。
大丈夫じゃない、でも、また走りたいって。
そう思えた。
最後に、曲が終わる。
スピカさんがステージの上で、観客へ向かって手を振る。
遠い。
安全な距離。
個人向けではない。
ただ、観客全体へ向けた、普通の挨拶。
それでも。
その笑顔が、まっすぐ心に届いた。
「……ありがとう」
私は呟いた。
「私、また――」
また、走る。
そう言おうとした。
その瞬間。
胸の奥がいっぱいになった。
視界が白くなった。
「停止します」
たづなさんの落ち着いた声。
外部停止ボタンが押され、映像が止まる。
やがて私は、ゆっくり目を覚ました。
ゴーグルは外されていた。
視界には、病室の白い天井。
けれど、さっきまでとは違って見えた。
「……私」
たづなさんが覗き込む。
「大丈夫ですか?」
「はい……」
「気絶、しました?」
「しました」
「……すみません」
「いえ」
たづなさんは優しく微笑んだ。
「今回は、前向きな気絶ということで」
「前向きな気絶……」
そんな分類があるんだろうか。
たぶん、ない。
でも、少し笑えた。
久しぶりに笑えた。
「たづなさん」
「はい」
「私、明日からリハビリ、ちゃんとやります」
「はい」
「焦らないようにします。でも……諦めたくないです」
「はい」
たづなさんは、静かに頷いた。
「それで十分です」
窓の外は、もう夜になっている。
病室はまだ白い。
脚はまだ動かせない。
レース場は遠い。
でも、完全に遠くはなかった。
目を閉じれば、まだステージの光が残っている。
歌が残っている。
また前を向きたいと思えた自分が、ここにいる。
後日。
試験報告書には、こう記された。
『被験者は視聴後、強い情動反応を示し一時的に意識喪失。
ただし覚醒後、リハビリ意欲の明確な回復を確認。
支援効果あり。
安全停止機能、正常作動』
そして、欄外に小さく赤字。
『ただし、やはり気絶対策は必要』
さらにその下。
別の筆跡で。
『でも、救えた』
真・最強メンタル計画V2.1。
初めて、危険物ではなく。
誰かの明日を、少しだけ照らした。
掲示板:【真V2.1】入院中の子、VRライブ支援で前を向けたらしい【なお気絶】
レス 1〜50
真V2.1の試験結果出たって
出たの?
今回、病院で使われたらしい
怪我で入院してる子向け?
そう
ライブに行けない子向けの支援装置として
本来の目的じゃん
ついに本来の目的で使われたのか
危険物じゃなくて?
今回は支援装置
今回は
大事なところ
真V2
・公式映像ベース
・ファンサ削除
・安全な距離
・高精度3D化
・開発者が開始三秒で気絶
V2.1は?
たづなさん監修
赤ペン先生監修
安全停止機能あり
遠景から開始
心拍確認
外部停止ボタンあり
単独使用禁止
一気にまともになった
問題児ちゃん単独だと危険物
赤ペン先生が入ると試作品
たづなさんが入ると支援装置
進化ルートかな
今回の入院してる子、かなり沈んでたらしい
怪我?
脚の怪我
治る見込みはあるけど、しばらく走れない
つらい
走れない時間って本当にきついよね
怪我そのものより、気持ちが薄くなっていくのが怖い
最初は悔しいんだよ
でも長くなると、悔しさも焦りも鈍ってくる
それが一番怖い
また走りたいって気持ちまで遠くなるやつ
V2.1、そういう子に届いたんだ
たづなさんが持って行ったらしい
試験結果どうだった?
視聴後に前向きな発言あり
気絶はした
なお気絶
でも「前向きな気絶」って報告書に書かれたらしい
そんな分類あんのか
なさそうだけどたづなさんが言ったなら事実
たづなさんの前向き評価は重い
気絶後に「リハビリ頑張る」って言ったらしい
効いてる
本当に効いてる
危険物が支援装置になった瞬間だ
泣いた
支援目的で始まって、ようやく支援になった
問題児ちゃんがそれ聞いたら泣く
もう泣いてそう
試験報告書の末尾に「でも、救えた」って書かれてたらしい
誰が書いた?
わからないけど筆跡が違うって
たづなさんかな
赤ペン先生かな
どっちでもどちらも泣ける
でも怪我した子へ
焦らなくていい
走れない時間もあなたの時間
また走りたいって思えたなら、それだけで十分すごい
泣いた
レス 51〜100
このスレで一番まともなレス
本当に応援してる
復帰したら拍手したい
勝っても負けても、ゴールしたら拍手する
それがスピカさんの見たい世界に近いんだろうな
ウィニングライブがない世界でも、少しずつ変わってる感じがする
スピカさんの歌だけじゃなく、それを受け取った子たちの行動で変わってる
真V2.1もその一つか
危険物から希望へ
最強メンタルちゃん、次は本当に安全に頼む
頼む
でも少しだけ期待してる
怖いけど、期待してる
この感情、名前ある?
最強メンタル計画
うまい
じゃあまず入院中の子に拍手
拍手
拍手
拍手
焦らず戻ってきて
また走りたいって思えたなら、それだけでもう一歩進んでる
そして真V2.1、よくやった
問題児ちゃんも、赤ペン先生も、たづなさんも、よくやった
なお気絶対策は続行でお願いします