真・最強メンタル計画V3(隠れスピカ・ダンジョン化計画)
── 隠れネズミー ──
「安全確認済み」
ノートにはそう書かれていた。
前回の真V2。
環境化ではなかった。けれど、あれは確かに成果だった。
視覚と聴覚。
方向性は間違っていなかった。
少なくとも、本人はそう結論づけていた。
「つまり私は……成長している!」
――間違った方向へ。
今日も一人の問題児が、机へ向かっていた。
真・最強メンタル計画V3。
前回の赤ペンだらけのノートを横へ置き、新しいページを開く。
『環境化について』
そこまでは良かった。
旧V3。
静止画型。
写真立て。待ち受け。天井。
「……環境化に近い気はするんだよね」
ペン先が止まる。
写真立てを持ち歩くか?
いや、持ち歩かない。
それでは真の環境化ではない。
「もっと自然に……
生活の中に……
いつでも……
無意識に……」
ぶつぶつ呟く。
その時だった。
ふと、小さい頃の記憶が脳裏をよぎる。
夢の国。
ネズミーランド。
隠れネズミー。
「あっ」
顔が上がる。
「これだ!!!!」
勢いよく立ち上がる。
椅子が倒れる。
「日常に自然に溶け込む!!
探すことで集中力を高める!!
しかも遊び感覚!!
最高!!!!」
もう誰にも止められない。
ノートへ猛烈な速度で文字が書き込まれていく。
『企画目的:
日常に隠された小さな目標物を探すことで、
集中力・観察力・精神統一を鍛える』
『宝探し形式』
『環境化成功の可能性大』
『教育的!!』
教育ではない。
だが本人は大真面目だった。
── 待ち時間、工作開始 ──
企画書提出。
そして待ち時間。
「暇だなぁ……」
普通なら待つ。
この問題児は違った。
「試作品くらいなら……
安全確認にもなるし……」
ならない。
工作開始。
数時間後。
「……できた!」
机の上には、小さなシルエット。
デフォルメ化された、どこか見覚えのある髪型。
どこか見覚えのある輪郭。
だが、直接的ではない。
本人は配慮したつもりだった。
「リアルすぎない!
つまり安全!」
危険である。
そして。
部屋中へ配置開始。
時計。
本棚。
カーテンの隙間。
棚の角。
ペン立て。
鏡の裏。
ベッド脇。
引き出し。
クッション横。
目覚まし時計。
合計十箇所。
「ふふふ……
宝探しみたい……!」
本人はご機嫌だった。
「でも隠した場所知ってるし、
安全確認だね!」
その理論はもう聞き飽きた。
念のため。
「ベッドの上なら安全!」
安全とは。
そして実験開始。
「まずは……
目覚まし時計の文字盤!」
ちらっ。
確認。
――気絶。
早かった。
あまりにも。
幸せそうな顔だった。
── 封印ミッション ──
夕方。
同室の子が帰宅する。
「ただいまー……」
静か。
嫌な予感。
この時点で嫌な予感がするのが、もう終わっている。
部屋へ入る。
いた。
問題児。
ベッドの上。
幸せそうに気絶。
「またぁ!?」
叫ぶ。
だが今回は違った。
ヘッドホンなし。
VRなし。
匂いもしない。
音も映像もない。
なのに倒れている。
「待って待って待って待って」
机を見る。
ノート発見。
読む。
沈黙。
「…………」
さらに読む。
『隠された10箇所』
『集中力トレーニング』
『宝探し』
『環境化』
「最悪だぁぁぁぁぁ!!!!」
理解した。
部屋そのものが危険地帯になっている。
まず救助。
だがベッドから降ろそうとした瞬間。
ぎゅっ。
「うわまた掴んだ!?」
無意識のシーツ抵抗。
もはや恒例。
「離して!!
今回は部屋全体が危ないの!!」
引っ張る。
離さない。
幸せそうな顔で抵抗している。
ホラーである。
その時。
同室の子は気づく。
問題児の視線。
うっすら。
時計方向。
「……あっ」
察した。
絶対あそこにある。
見ないように接近。
時計を裏返す。
小さなシルエット発見。
「これかぁ!!」
回収。
封印。
その瞬間。
問題児の首。
すっ……
別方向へ動く。
「やめて怖い!!」
ホラー映画だった。
完全に。
視線の先を見る。
棚。
「あるんでしょ!?
もう分かってるからね!?」
回収。
封印。
するとまた首が動く。
「うわぁぁぁぁ!!」
それから始まった。
真・最強メンタル計画V3。
封印ミッション。
カーテン。
本棚。
引き出し。
鏡裏。
見つけるたびに。
問題児の首が動く。
すっ……
「GPSなの!?」
たまに寝返りまで打つ。
しかも幸せそう。
「なんでそんな幸せそうなの!?」
十個目回収時には、
同室の子は完全に疲弊していた。
「……終わった……?」
恐る恐る確認。
問題児。
すやすや。
もう首は動かない。
「た、助かった……」
安心した瞬間。
問題児。
小さく呟く。
「……もっと……
難易度……
上げられるかも……」
「やめて!!!!!!!!」
寮に響く悲鳴だった。
掲示板:【速報】例の子、今度は部屋をダンジョン化したらしい【真V3】
レス 1〜50
真・最強メンタル計画V3、確認。
また?
また。
今度は何?
部屋の中にスピカきゅんっぽいシルエットを隠して宝探し形式にした。
?????
環境化ってそういう意味じゃない。
旧V3の静止画から何を学んだの?
「写真立ては持ち歩かないから真の環境化ではない」って結論らしい。
そこは賢いのに。
発想の出口が全部罠。
しかも隠れネズミー着想らしい。
夢の国に謝って。
夢の国じゃなくて悪夢の部屋なんよ。
本人はベッドの上で安全確認したらしい。
安全確認で即気絶するな。
しかも一個目で落ちたって聞いた。
十箇所隠して一箇所目で終了は草。
残り九箇所はなんなんだよ。
時限式トラップ。
同室ちゃんが帰ってきた時、音なし映像なし匂いなしで倒れてたらしい。
原因不明すぎて怖い。
ノート見た瞬間すべてを理解する同室ちゃん、もう専門家。
最強メンタル計画鑑識官。
現場検証スキルが高すぎる。
しかも気絶中の本人が、隠し場所の方向に首を向けたらしい。
ホラーじゃん。
幸せそうに気絶しながら索敵してるの怖すぎる。
スピカきゅん探知機。
危険物の発生源なんだよなぁ。
同室ちゃん、時計を見ないように封印したの偉すぎる。
見たら二次被害の可能性あったからね。
目視確認できない封印作業、難易度高すぎる。
しかも一個封印するたびに首が別方向向くんでしょ?
完全に呪いの人形。
本人は幸せそうだから余計怖い。
真V3、旧V3より危険では?
旧V3:一枚見たら落ちる
真V3:部屋全体がミミック
悪化してる。
でも宝探し形式は普通に楽しそうではある。
やめろ。理解を示すな。
いや、スピカきゅん成分を抜けば集中力トレーニングとしては成立するかも。
そうなんだよ。毎回そこだけは惜しいんだよ。
目的は良い。
技術もある。
善意もある。
素材選定だけが終わってる。
素材:スピカきゅん
結果:全損
同室ちゃん、十箇所全部封印したの?
したらしい。
強い。
もうトレーナーじゃなくて罠解除職人。
赤ペン先生からシーフ職に転職してる。
なお最後に本人が「もっと難易度上げられるかも」って寝言言った模様。
レス 51〜100
やめろ。
やめて。
本当にやめて。
真V4の気配がする。
またか。
でもちょっと楽しみな自分がいる。
わかる。
同室ちゃんに謝れ。
ごめんなさい。
でも次のノートタイトルだけ知りたい。
最低。
封印しろ。
でも封印場所にも隠しスピカきゅん置きそう。
終わりだよこの計画。