合宿初日・学園側(最強引継ぎ計画V1)
「最強引継ぎ計画V1」
海の向こうでは、きっと先輩たちが笑っている。
窓の外を眺めながら、後輩ちゃんはぼんやりとそんなことを考えていた。
トレセン学園の昼下がり。
いつもなら、どこかから足音が聞こえる。廊下を走る音。笑い声。誰かが怒られる声。遠くで聞こえるトレーニングの掛け声。
けれど、今日は少しだけ静かだった。
合宿組が出発してから、学園の空気はどこか広くなったように感じる。
先輩たちがいない。
それだけで、いつもより廊下が長く見えた。
「……先輩たち、しばらくいないんだなぁ」
ぽつりとこぼした声は、思ったより小さかった。
後輩ちゃんには、同室の子がいない。
それは、彼女の入学が本当にぎりぎりで決まったからだった。
少し前まで、彼女は車いすで生活していた。レースに戻れるかどうか。トレセン学園に入れるかどうか。そもそも、自分の足で前へ進めるのかどうか。
全部が、ぎりぎりだった。
間に合った。間に合えた。
その理由を、彼女は知っている。
スピカさんの歌があったから。そして、最強メンタル計画ちゃんが作ってくれたものがあったから。
あの日、止まっていた心が動いた。届かないと思っていた場所に、もう一度手を伸ばせた。
だから今、自分はここにいる。
そう思うと、胸の奥がじんわり温かくなった。でも同時に、少しだけ寂しくなる。
先輩は今、海にいる。赤ペン先生も一緒にいる。きっと楽しそうにしている。きっと何かをやらかさないように見張られている。きっと、それでも何かを思いついている。
想像して、後輩ちゃんは少し笑った。けれど、その笑みはすぐにしゅんと小さくなる。
「……いけない」
後輩ちゃんは、ぱん、と両手で頬を軽く叩いた。
「寂しがってばかりじゃ、だめ」
机の上に置いてあった一冊のノートへ手を伸ばす。
表紙には、先輩の文字で大きくこう書かれていた。
――最強引継ぎ計画。
その文字を見るだけで、胸の奥がきゅっとなる。後輩ちゃんはノートを両手で抱きしめた。硬い表紙が胸に当たる。
不思議だった。
ただのノートなのに。先輩からもらったものだと思うだけで、心が少し軽くなる。
『寂しくなったら、これを見てね』
そんな声が聞こえた気がした。
「……はい、先輩」
後輩ちゃんは小さく頷き、そっとノートを開いた。
最初のページには、まず大きくこう書かれていた。
――大事なこと!
その下には、安全確認の流れがびっしりと書かれている。
材料確認。使用目的確認。対象者確認。使用場所確認。体調確認。異常時の中止判断。相談すること。独断で進めないこと。危ないと思ったら止まること。
とても丁寧だった。
文字は丸くて、少し跳ねるような癖がある。真剣に書いてあるのに、どこかかわいい。
「先輩の字、やっぱりかわいい……」
そこまでは、何度も読んだ。何度も読んで、何度も胸に抱いた。
けれど、その先のページはまだ開いていなかった。
モノづくりのページ。そこから先は、少し怖かった。
何度か、指をかけたことはあった。でも、そのたびに止まってしまっていた。
先輩のようになりたい。でも、先輩のようになんでもできるわけじゃない。先輩の考えを読んで、もし「わからない」と思ってしまったら。もし「自分には無理だ」と思ってしまったら。
先輩はこんなに丁寧に作ってくれたのに。
それを受け取れない自分に、なってしまったら。
そう思うと、ページをめくる指が止まってしまっていた。
でも。
今日は、少しだけ違った。
先輩はここにいない。
それが、なぜか背中を押した。隣で見ていてくれていたら、むしろ怖い。失敗したら、悲しませてしまうかもしれない。でも今は、誰も見ていない。自分だけのページ。自分だけの時間。
うまくできなくてもいい。まずは、ちゃんと見たい。
後輩ちゃんは深呼吸した。そして、そっとページをめくった。
そこには、元気いっぱいの文字でこう書かれていた。
――最強引継ぎ計画V1!
後輩ちゃんの耳がぴんと立った。
「ぶい、わん……」
その下には、さらに大きく。
――最初のステップは料理! 簡単! レシピ通り! おいしいは正義!
後輩ちゃんは目を瞬かせた。
「料理……?」
もっと難しいものが出てくると思っていた。回路。装置。謎の薬品。よくわからない設計図。そういうものを想像していた。
でも、最初に書かれていたのは料理だった。しかも、お菓子作り。
ページには、クッキーの作り方が丁寧に書かれている。
材料の量。混ぜる順番。混ぜすぎないこと。オーブンの温度。焼き上がりの目安。焦げたら無理しないこと。味見は一個まで。友達に渡すならラッピングすると嬉しい。
びっくりするほど、細かかった。そして、とてもわかりやすかった。
これは、誰にでも向けた資料ではない。後輩ちゃんのために作られたものだった。後輩ちゃんがどこで不安になるか。どこで手が止まるか。どんな言葉なら安心できるか。それを先輩は、きっと考えてくれた。そのことが、ページの端々から伝わってくる。
「……これなら」
後輩ちゃんの尻尾が、ふわりと揺れた。
「これなら、私にもできるかも」
それからの後輩ちゃんの動きは早かった。
材料を確認する。量を測る。ノートに書いてある通り、ひとつひとつ進める。
バターの香りが広がる。生地を丸める。少し不格好になったものもあるけれど、それも手作りらしくていい気がした。
オーブンの前で、後輩ちゃんはじっと待った。焼き上がるまでの時間が、こんなに長いとは思わなかった。でも、少しずつ部屋に甘い香りが広がっていく。
バター。小麦。砂糖。温かい匂い。
やがて、音が鳴った。
後輩ちゃんはミトンをつけ、慎重に天板を取り出す。そこには、こんがり焼けたクッキーが並んでいた。
「……できた」
見た目は普通。においも普通。ちゃんと、普通のクッキー。
後輩ちゃんはぱあっと顔を輝かせた。
「できました、先輩……!」
ラッピングもした。小さな袋に入れて、リボンを結ぶ。ちょっと曲がったけれど、そこも自分らしいと思うことにした。
最後に、ノートの安全確認フローを確認する。
チェック欄がある。
対象者確認。材料確認。体調確認。提供数確認。
そして最後の欄。そこには、先輩の文字でこう書かれていた。
――後輩ちゃんなら安心安全、そのまま大丈夫!
後輩ちゃんは真剣な顔で頷いた。
「ヨシ!」
何もヨシではなかった。けれど、この時の後輩ちゃんに、それを知るすべはなかった。
昼からの授業が終わった後、後輩ちゃんは教室の友達にクッキーを配った。
「作ったの?」
「すごい、かわいい!」
「食べていい?」
「はい!」
友達たちは嬉しそうに袋を開ける。
カリッ。軽い音がした。
「おいしい!」
「ほんとだ、普通においし――」
その子の声が、途中でふわっとほどけた。
「あれ……?」
力が抜けたように、椅子にすとんと座る。別の子もクッキーを食べる。
「うわ、おいし……なんか……」
目がとろんとする。
「しあわせ~~~……」
机に頬をつける。また一人。また一人。
教室の一角で、クッキーを食べた友達たちが、次々と幸せそうな顔で力を抜いていった。
悲鳴はない。苦しそうでもない。むしろ、全員ものすごく幸せそうだった。
「ふわぁ……」
「なんか、爽やか……」
「スピカさん……?」
「すき……」
最後の一言を聞いて、後輩ちゃんは目を輝かせた。
「みんな、幸せそう……!」
成功。これは成功だ。だって、みんな笑っている。みんな幸せそう。ちゃんとおいしいと言ってくれた。先輩のノート通りにできた。
後輩ちゃんは嬉しくなって、ノートを開き直した。まだ読んでいなかった説明欄を確認する。
そこにはこう書かれていた。
――濃縮還元スピカさん風クッキー!
後輩ちゃんは首を傾げた。
「濃縮還元……?」
さらに読み進める。
――おいしいクッキーとともに、あとからカプセルが割れて、口の中に爽やかなスピカさんをイメージした香りが満ちる! ブレスケアも兼ねた安全仕様! お菓子作りの第一歩におすすめ!
後輩ちゃんはぽんと手を打った。
「なるほど……!」
だから、みんなあんなに幸せそうなのだ。おいしいだけではない。あとから爽やかな香りが来る。しかもブレスケアも兼ねている。
すごい。やっぱり先輩はすごい。そして、それを自分にも作れるようにしてくれた。
胸がいっぱいになった。
後輩ちゃんは、幸せそうに机へ突っ伏している友達たちを見回す。みんな穏やかな顔をしている。まるで、いい夢を見ているみたいだった。
「成功ですね、先輩!」
後輩ちゃんは、ノートをぎゅっと抱きしめた。どこまでも嬉しそうに。どこまでもまっすぐに。その笑顔は、善意だけでできていた。
なお、教室ではこのあと、偶然通りかかった先生が幸せそうに倒れている生徒たちを発見し、職員室と保健室とたづなさんへ同時に連絡が飛ぶことになる。
そして、ノートの安全確認欄に書かれていた、
――後輩ちゃんなら安心安全、そのまま大丈夫!
という一文は、後に赤ペン先生不在時における最危険記述として扱われることになるのだった。
トレセン学園側スレ
【たすけて】合宿組へ、こっちはこっちで始まった【そっち行きたい】
レス 1〜50
たすけて
どうした
合宿組のカレー報告見て情緒やられた?
ちがう
いやそれもある
でもちがう
要件を言って
後輩ちゃんがクッキー作ってきた
はい平和
かわいい
お菓子作りデビューかな?
守りたい、その日常
食べた子が幸せそうに気絶した
はい?
はい?????
ちょっと待って
合宿組がいない間に?
赤ペン先生いない間に?
最強メンタル計画ちゃんいない間に?
違う
最強メンタル計画ちゃんがいないから起きた
どういうことだよ
先輩からもらったノートを見て作ったらしい
あっ
あっ
あっ
ノートって
例の
最強引継ぎ計画?
終わった
始まったんだよ
やめて
合宿初日に学園側で新章始めないで
合宿組、聞こえる?
こっちはもうだめです
そっちに私たちも行きたい
海
カレー
レクリエーション
安全そう
なお合宿側もカレーで何か起きてる模様
逃げ場がない
クッキーどうだったの?
おいしかった
そこはおいしいんだ
普通においしかった
バターの香りがして
サクッとして
甘さもちょうどよくて
普通の感想
そこから?
あとから爽やかな何かが来た
何か
何かって何
スピカさんっぽい爽やかさ
出たよ
概念が食品に入ってる
食品に概念を混ぜるな
本人曰くブレスケアも兼ねてるらしい
ブレスケアで気絶するな
いやでも口の中がすごく爽やかになった
レビューするな
爽やかで
優しくて
なんかこう
「今日も頑張ったね」って言われた気がして
食べ物に幻聴を追加するな
幻聴じゃない
香り
レス 51〜100
香りでそこまで行くな
でもクッキーはおいしかった
だからそこが怖いんだよ
不味かったらまだ止められる
おいしいから止めづらい
しかも後輩ちゃんがすごく嬉しそうだった
ああ……
それは止めづらい
「成功ですね先輩!」って言ってた
胸が痛い
善意しかない
善意しかない危険物ほど対応に困るものはない
しかも今回、作った本人は気絶してないんだよね?
してない
配ってにこにこしてた
制作者耐性持ちか?
違うと思う
先輩からもらったノートだから嬉しさが勝ってる
それも一種の耐性では?
スピカさん耐性じゃなくて先輩補正
新属性を増やすな
保健室どうなってる?
みんな幸せそうに寝てる
異常なし
口臭も爽やか
最後の情報いる?
いる
ブレスケアとしては成功してる
成功判定するな
先生が「体調不良ではない……? いや気絶は体調不良……?」って混乱してた
先生かわいそう
たづなさん呼ばれた?
呼ばれた
終わった
誰が
たぶん胃
たづなさん、合宿組の監督じゃなくて学園側に残ってて正解だったのか不正解だったのか
不正解を引いただけでは?
合宿先にも理事長がいるんだっけ?
いる
じゃあどっちにも火種がある
分身して、たづなさん
やめろ
分身したら胃も分身する
クッキーのレシピ見た人いる?
チラッと見た子がいる
タイトルが「濃縮還元スピカさん風クッキー」だったらしい
濃縮
還元
スピカさん風
クッキー
単語全部だめ
最強メンタル計画ちゃん、後輩ちゃんに何を渡していったの?
愛
それはそう
それはそうなんだけど
安全確認フローもちゃんとあったらしいよ
じゃあ安心だね
レス 101〜150
最後に「後輩ちゃんなら安心安全そのまま大丈夫!」って書いてあった
そこ赤ペン先生!!!!!!
赤ペン先生!!!!!!!!
不在!!!!!!!!
そこに赤を入れてくれ!!!!!!
致命的な空白
合宿組に連絡した?
したらしたで、最強メンタル計画ちゃんが海の家で何か作りそう
連絡するな
でも赤ペン先生には連絡したほうがよくない?
赤ペン先生、たぶん今カレー食べてる
平和でいて
その平和もたぶん怪しい
合宿組「カレーおいしい!」
学園組「クッキーおいしい!」
企業「なんで売上が上がってるの?」
たづなさん「どうして」
全部つながってるのやめて
後輩ちゃん本人は今どうしてるの?
ノート抱えてにこにこしてる
「先輩に報告したいです」って言ってる
かわいい
かわいいんだけど
止めるのがつらい
誰か優しく言ってあげて
成功だけど配る前に先生に見せようねって
成功って言うな
いや成功ではあるけど
おいしい
爽やか
幸せ
気絶
最後だけ除けば完璧
最後が一番だめ
でもさ
後輩ちゃん、最初の一歩が料理だったのちょっと泣けるよね
わかる
いきなり機材とかじゃなくて
「あなたにもできるよ」って感じがする
最強メンタル計画ちゃん、本当に後輩ちゃんのこと考えてノート作ったんだなって
そこは本当にいい話
だから余計に困る
善意
成長
継承
お菓子作り
気絶
最後でジャンルが変わる
後輩ちゃん、先輩がいなくて寂しかったんだろうな
先輩のノート見て元気出したんだよね
それで友達を喜ばせようとしたんだよね
うん
で、喜ばせたんだよね
うん
喜ばせすぎたんだよね
うん……
今回の問題、そこ
幸せそうに気絶するの、もうトレセンの風物詩になってない?
するな
風物詩にするな
合宿組が帰ってくるまであと何日?
二か月
無理
長すぎる
赤ペン先生の不在期間として長すぎる
たづなさんが後輩ちゃんのノートを確認し始めたらしい
レス 151〜200
よかった
これで安心
たづなさん、最初の数ページ読んで天井見上げてた
安心じゃなかった
何が書いてあったんだ
V1が料理
V2以降はまだ不明
不明が怖すぎる
V2ってなに?
やめろ
考えるな
V1がお菓子ならV2は飲み物では?
やめろって言ったよね?
スピカさん風爽やかドリンク
やめろ
運動後の水分補給に最適!
やめろ
飲んだ瞬間に体の内側から応援される感じ!
やめろおおおおお
たづなさんが今ノート閉じた
判断が早い
後輩ちゃんに何て言ってる?
「とてもよくできています。ただし、誰かに渡すものは必ず事前確認しましょうね」って
優しい
えらい
後輩ちゃん、しょんぼりしてない?
ちょっとだけしょんぼりしたけど
「はい! もっと安全にできるように頑張ります!」って
かわいい
いい子
もっと安全に、が怖い
改善意欲がある
改善方向が問題
先輩と同じ系譜
やっぱり引き継がれてる……
でも本人は本当に友達に喜んでほしかっただけなんだよ
それはわかる
わかるから困ってる
ちなみに気絶した子たち、起きたあと何て?
「もう一枚ある?」
だめだこいつら
気持ちはわかる
わかるな
だっておいしかったんだもん
なお、クッキーはおいしかった
結論そこなのやめて
合宿組へ
カレー楽しんでますか
こっちはクッキーで倒れました
そっちに私たちも行きたいです
でもクッキーはおいしかったです
以上、学園側からでした
追伸
赤ペン先生、帰ってきたらノート見て
追伸が本題すぎる
企業スレ
【食品?】トレセンの子から聞いたんだけど、ブレスケア兼ねるクッキーって何?【菓子?口腔ケア?】
レス 1〜50
トレセンの子から聞いたんだけどさ
ブレスケア兼ねるクッキーって何?
何?
何って何?
いや、だから
クッキー食べたらおいしくて
あとから爽やかな香りが来て
口の中がすっきりして
幸せそうに気絶したらしい
最後
最後だけおかしい
途中までは普通に商品企画として成立する
途中まではうちも興味ある
幸せそうに気絶した時点で全員解散しろ
待って
「あとから香りが来る」ってどういう構造?
カプセルが割れるらしい
は?
焼き菓子内包型香味カプセル?
急に本職の声になるな
クッキーって焼成するよね?
する
香味カプセルって熱に弱いよね?
基本弱い
じゃあ何で残ってるんですかね
知らない
知らないのに声が震えてる
ブレスケア用途なら、食後の口中香気を残す発想自体はわかる
でもクッキーでやるな
いやクッキーでやるのは別にあり
ミント系とか柑橘系なら商品として考えられる
問題は「スピカさん風」
そこ
そこを食品に入れるな
スピカさん風って何の香り?
爽やか
優しい
応援される感じ
らしい
最後が香料の範囲を超えている
応援される感じは香料に含まれますか?
含まれません
でしょうね
でも「爽やか」「優しい」は設計できる
柑橘、ハーブ、淡い甘さ、乳脂肪感の後味調整とか
そこまではできる
「スピカさんに今日も頑張ったねって言われた気がする」はできない
できたら怖い
なお、作ったのは後輩ちゃんらしい
後輩ちゃん?
あの?
車いすリハビリから入学間に合ったあの子?
その子
いい子じゃん……
いい話じゃん……
なんで企業スレが震える展開になるの?
先輩からもらったノートを見て作ったらしい
あっ
ノート
最強引継ぎ計画?
それ
解散
解散するな
確認が先
レス 51〜100
商品企画としては正直かなり面白い
気絶さえなければ
全部それ
構造だけ見ると
・普通においしいクッキー
・咀嚼後、時間差で香味カプセル破裂
・口中に爽やかな香りが広がる
・食後の口臭ケアも兼ねる
だから、普通に新カテゴリになり得る
気絶さえなければ
気絶さえなければ
問題は香りのプロファイルが「スピカさん風」なこと
なぜそこを入れた
ノートにそう書いてあったらしい
最強メンタル計画ちゃん……
合宿に行っても置き土産で企業を震わせる女
でもさ
これ、後輩ちゃんが作れるレベルに落とし込まれてたんだよね?
らしい
手順がめちゃくちゃ丁寧で、後輩ちゃん専用に書かれてたとか
そこは本当にすごい
個人最適化された技術継承ノートとしての完成度が高すぎる
教材メーカーが反応した
だって「その子に伝わる形で専門技術を料理レベルまで分解している」んでしょ
教育資料として普通に欲しい
中身が危険物なんですが
そこは別部署で
別部署に投げるな
で、ブレスケア効果は?
あったらしい
起きた子の口元が爽やかだったって
成功してる……
成功判定するな
いや、口腔ケアとしては成功してる
人体側が失敗してる
お菓子としても成功してる
おいしかったんだろ?
かなりおいしかったらしい
成功してる……
成功判定するなって言ってるだろ
食品として
味:成功
香り:成功
口腔ケア:成功
安全性:要検証
情緒:失敗
情緒という評価項目
トレセン関連商品には必須項目です
嫌な必須項目
しかも後輩ちゃん、成功ですね先輩!って嬉しそうだったらしい
止めづらい
善意100%
これは怒れない
でも止めないと増える
V1ってことは増える
言うな
V2は飲み物かな
言うな
呼んだ?
呼んでない
運動後に飲める爽やか応援ドリンク?
帰れ
水分補給とミネラル補給を兼ねて、後味にふわっと優しい香りが残る
企画書を書くな
商品としてはありでは?
ありなのが怖いんだよ
レス 101〜150
「スピカさん風」を抜けば普通にあり
抜けるの?
抜けるなら最初から事故ってない
悲しい真理
でも、これスピカさん要素がなかったら、ただの高品質な機能性クッキーだよね
そう
だから余計に怖い
基礎技術はちゃんとしている
基礎技術がちゃんとしてる事故が一番困る
商品名だけならいけそう
「息さらりクッキー」
「食後すっきりバターサブレ」
「ブレスケア焼き菓子」
最後そのまますぎる
商標確認してから言って
法務が来た
あと、気絶する商品は売れません
正論
でもトレセンの子たち、起きたあと「もう一枚ある?」って言ってたらしい
売れません
売れます
売れません
売れます
売りません
法務とマーケが戦うな
「おいしい」「爽やか」「幸せ」まで口コミがある
これは強い
「気絶」がある
話題性もある
回収案件です
法務が正しい
でも試作品としては見たい
成分だけ確認したい
香りの再現方法だけ知りたい
焼成後にどうカプセルを残したのかだけ知りたい
全員だめです
トレセン側ではもうたづなさんがノート確認してるらしい
よかった
これで安心
数ページ読んで天井見上げてたらしい
安心じゃない
たづなさんの天井見上げ頻度が増えている
そのうち天井に相談しそう
問題は、後輩ちゃんが「もっと安全にできるように頑張ります!」って言ってること
改善意欲
いいことなのに怖い
安全にする方向なら、まず香味成分からスピカさん概念を抜くべき
だから抜けるの?
わからない
たぶん本人たちは「爽やかで優しい香り」としか思ってない
でも受け取る側がスピカさんを連想して燃える
つまり受け手側の問題?
いや作り手側もだいぶ問題
両方か
後輩ちゃん用ノートの構成は本当に見たい
「最初の成功体験」を作る教材として完璧すぎる
教材メーカー、そこに食いつき続けるな
だって、最初に料理を選んでるのがいい
いきなり装置ではなく、日常の中で誰かを喜ばせられるもの
後輩ちゃんの自己効力感を育てる設計になってる
レス 151〜200
急にいい話にするな
いい話ではある
結果は集団すやすや事件だぞ
教材としてはいい
中身は要修正
全部それ
そういえば、合宿組は今カレーで盛り上がってるらしい
海の家カレー
こっちはクッキー
食品業界を挟み撃ちにするな
カレーの謎スパイスとクッキーの香味カプセル
同日に来るな
六月初日から食品業界が燃えてる
だからV2で飲料が来るって
来るな
水分補給は大事だよ?
正しいことを言うな
怖くなる
飲料で気絶者が出たら本当に大問題です
でも名前は考えた
「スピカ――」
やめて
法務の反応が早い
結論としては
ブレスケア兼ねるクッキー自体は成立する
ただし、トレセン由来のものは情緒誘発性の確認が必須
情緒誘発性試験
新しい安全基準を作るな
でも必要
必要なのが嫌だ
情緒誘発性試験ってどうやるの?
ウマ娘モニターに食べてもらう
だめ
耳と尻尾の反応を見る
だめ
気絶前に中止
できるの?
わからない
だめじゃん
でもブレスケア性能は本当に惜しい
お菓子としても惜しい
カプセル技術も惜しい
ノート構成も惜しい
全部惜しい事故
事故は事故です
話題性はあります
黙って
企業側の結論:
技術はすごい
商品性もある
でもトレセン案件なので一回深呼吸しろ
深呼吸したらスピカさん風の香りがしそう
やめろ
それはもう空調案件
空調メーカーを呼ぶな
呼んだ?
呼んでない
室内に爽やかな応援感を均一拡散する技術なら――
解散!!!!!!