春風と新入生と、二重に焼かれた脳
── 校門の前で、春風を受ける ──
春風の舞う季節だった。
冬の冷たさを忘れきれない空気の中に、それでも確かにやわらかい匂いが混じっている。
校門へ続く道には、桜の花びらがちらちらと舞っていた。
今日から新学期。
トレセン学園にも、新しいウマ娘たちがやってくる。
大きな鞄を持った子。付き添いの家族と別れがたそうにしている子。すでに友達を作って笑っている子。緊張で耳をぴんと立てている子。
希望と不安と期待が、春風に混ざっていた。
その中を、一人のウマ娘がゆっくりと歩いていた。
歩いていた。
ただ、それだけのことが。
彼女にとっては、奇跡みたいなことだった。
「……ここが、トレセン学園」
ぽつりと呟く。
校門の向こうに広がる景色を、彼女はじっと見つめた。
何度も夢に見た場所だった。
けれど、夢の中で見るトレセン学園は、いつも少し遠かった。自分の足で踏みしめることはできなかった。
彼女は長い間、車いすで生活していた。
完全に走れなくなったわけではない。ただ、足が思うように動かなくなった時期があった。レースどころではなかった。トレーニングどころではなかった。まず立つこと。次に歩くこと。そこから、少しずつ。
少しずつ。
当たり前だったものを、ひとつずつ取り戻していく日々だった。
長かった。本当に長かった。
窓の外で走る誰かの影を見るたびに、胸の奥がきゅっとなった。画面越しにレースを見るたびに、手を握りしめた。
もう戻れないのかもしれない。
そう思った日もあった。もう自分は、あの芝の上に立てないのかもしれない。そう思って、布団の中で声を殺した日もあった。
そんな時だった。
スピカが現れたのは。
最初は、ただの配信だった。男の人が、ウマ娘について熱く語っている。それだけなら、珍しいとは思っても、心を動かされるほどではなかったかもしれない。
けれど。
その人は、違った。
勝つ子だけを見ていなかった。速い子だけを見ていなかった。才能がある子だけを見ていなかった。走ることに向き合うすべてのウマ娘を、本気で好きだと言っていた。
画面の向こうから。遠い場所から。自分には届かないはずの声が。
なぜか、胸の真ん中に届いた。
『夢を目指す君たちの力になれたら』
正確な言葉は、もう少し違ったかもしれない。でも彼女の中には、そういう意味として残っていた。
その日から、彼女は少しずつ顔を上げられるようになった。
リハビリはつらかった。痛い日もあった。何も進んでいない気がする日もあった。でも、画面の向こうでスピカが歌うたびに。語るたびに。ウマ娘の走りを好きだと言うたびに。
彼女は思った。
もう一度、走りたい。
もう一度、あの場所へ行きたい。
そして、いつか。勝って。スピカに、祝ってもらいたい。
「……ふふ」
校門の前で、彼女は小さく笑った。
その笑みは、夢を取り戻した者のものだった。
少しだけ危なかった。
なぜなら。
その笑みの奥で、脳はすでにこんがり焼けていたからである。
スピカきゅん。スピカきゅんに見てもらう。スピカきゅんに、よく頑張ったって言ってもらう。スピカきゅんの前で、走る。スピカきゅんの前で、勝つ。スピカきゅんの歌を、いつか目の前で聞く。
そのために、私はここへ来た。
ここまでは、まだよかった。
いや、よくはない。だいぶ焼けている。
しかし、トレセン学園では珍しいことではなくなっていた。スピカの登場から約一年。学園内外には、すでに同じような症状を持つウマ娘が大量に存在していた。
配信で焼かれた者。現地ライブで焼かれた者。ファンサで気絶した者。曲で走り出した者。寝る前に動画を見て安眠した者。安眠しすぎて朝まで幸せそうに沈んだ者。
それらはもう、ある程度、日常の一部になりつつあった。
問題は。
彼女が焼かれたのは、スピカだけではなかったことだ。
「……待っててくださいね」
彼女は、そっと胸に手を当てる。
脳裏に浮かぶのは、もう一人。
なんちゃって白衣。赤ペンだらけのノート。危険物。封印。気絶。金庫。
そして、それでもなお。
誰かのために、真っ直ぐ突っ走ったウマ娘。
「……先輩」
胸の中で、そっと呼んだ。
春風が吹いた。桜が舞った。新入生のウマ娘は、感極まったように瞳を潤ませた。
彼女は、その先輩にも脳を焼かれていた。
きっかけは、あのVRだった。
正式名称は長かった気がする。本人の企画書では、もう少しすごそうな名前がついていた気がする。だが、彼女にとってそれは、ただの危険物ではなかった。
救いだった。
車いす生活で、現地ライブに行けなかった。人混みも、長時間の移動も、体調的に難しかった。画面越しで見るスピカは眩しかった。でも、画面は画面だった。届かない距離が、どうしてもあった。
その距離を。
少しだけ、埋めてくれたのが、あのVRだった。
もちろん危険だった。最初に体験した時、彼女は見事に気絶した。
気絶した。
ものすごく幸せそうに。
気絶した。
家族には心配された。担当医にも少し怒られた。リハビリの先生には「刺激が強すぎます」と真顔で言われた。
けれど。
目を覚ました時、彼女は泣いていた。怖かったからではない。苦しかったからではない。
ああ。まだ、自分はあの場所に行きたいんだ。まだ、走りたいんだ。まだ、夢を諦めていないんだ。
そう思えたからだった。
あのVRを作った先輩は、たぶん少しおかしい。いや、かなりおかしい。作るものはだいたい危険物だし、企画書の方向性はなぜか常に斜め上へ飛んでいく。反省しているようで、している。しているのに、次の瞬間には別の角度から問題が発生する。
そんな先輩だと、掲示板には書かれていた。
でも。
彼女は思った。
だからこそ、尊敬していた。
それでも、あの人は誰かを救えるものを作った。自分は救われた。
なら。
いつか会いたい。ありがとうと言いたい。あなたのおかげで、私はまたここまで来られたのだと。
「スピカきゅんに勝利を祝ってもらって……」
彼女は拳を握った。
「そして先輩に、直接お礼を伝える……!」
希望に満ちた声だった。とても綺麗な決意だった。そこまでは、本当に美しかった。
だが、春風はなぜか少しだけ不穏に吹いた。
なぜなら。
彼女の鞄の中には、一冊の新品ノートが入っていた。
表紙には、丁寧な字でこう書かれている。
『リハビリ経験を活かしたメンタル強化研究ノート』
まだ、何も危険ではない。まだ、ただのノートである。少なくとも今は。
しかし、その一ページ目には、すでにこう書かれていた。
尊敬する先輩方
・スピカさん
・先輩
そして二ページ目。
目標
・レースで勝つ
・スピカさんに祝ってもらう
・憧れの先輩に、直接お礼を伝える
・いつか私も、誰かの希望になるものを作る
そこまではよかった。まだよかった。
三ページ目。
『案1:リハビリ中でもできる安全な応援体験』
悪くない。
四ページ目。
『案2:歩行訓練とスピカさんの音声を組み合わせる』
少し怪しい。
五ページ目。
『案3:最強メンタル計画ちゃんの成果物を参考に、負荷を極小化した常時励まし環境を作る』
だいぶ怪しい。
六ページ目。
『案4:音・映像・香り・触覚は危険度が高いので、まずは安全な春風から始める』
もう危ない。
七ページ目。
『春風にスピカさん概念を乗せられないか?』
完全に危ない。
そのノートは、静かに鞄の中で眠っていた。
誰もまだ、その存在を知らない。
校門前で彼女が感慨に浸っている、その少し後方。
新入生の誘導をしていた上級生が、ふと彼女の様子を見て首をかしげた。
「……ねえ、あの子」
「うん?」
「なんか、すごく真面目そうなんだけど」
「いいことじゃない?」
「うん。いいことなんだけど」
上級生は、少しだけ眉を寄せた。
「なんか、雰囲気が……」
「雰囲気?」
「最強メンタル計画ちゃんが、新しいノートを開く直前に似てる」
「すぐ先生に報告しよ」
判断が早かった。
だが、それは正しかった。
トレセン学園では、危険物の発生には初動対応が重要である。
── 理事長室にて ──
一方、その頃。
理事長室。
「新入生名簿です」
駿川たづなは、春らしく整えられた資料を机の上に置いた。
秋川やよい理事長は、椅子の上で胸を張っている。
「新風ッ! 今年もまた、未来あるウマ娘たちがこの学園に集うのだな!」
「はい。今年も素晴らしい子たちが入ってきますよ」
「うむッ! 全力で支えねばならんな!」
理事長は満足げに頷いた。
その様子を見ながら、たづなは淡々と名簿をめくる。
通常であれば、新入生の情報確認は希望に満ちた仕事である。適性。経歴。体調面の注意。寮の割り振り。担当予定の調整。新しい一年の始まりを感じる、穏やかな業務。
そのはずだった。
「……あら」
たづなの手が止まった。
「どうした、たづな?」
「この子ですが……長い車いす生活を経て、リハビリを続け、今年から本格的にトレセン学園へ入学ですね」
「ふむ。努力の子だな!」
「はい。とても頑張った子です」
たづなは、資料に目を落としたまま微笑んだ。
そこには、慎重なリハビリ計画と、本人の強い希望が記されていた。走ることへの意欲。レースへの復帰。体調管理上の注意点。無理をさせないこと。けれど、挑戦する心を尊重すること。
たづなは静かに頷く。
「こういう子こそ、きちんと支えてあげたいですね」
「当然ッ!」
理事長も力強く頷いた。
その時までは、空気は温かかった。
しかし、次の行で、たづなの表情が止まった。
「……」
「たづな?」
「理事長」
「うむ?」
「この子、リハビリ中に使用していたメンタルケア機器の欄に……例のVRがあります」
理事長の耳がぴくりと動いた。
「例の、とは」
「例の、です」
「……スピカライブVRか?」
「はい」
沈黙。
理事長室に、春の穏やかな空気とは別のものが流れた。
それは、経験者だけが知る沈黙だった。危険物を前にした時の沈黙だった。
「で、でもだな、たづな!」
理事長は少しだけ身を乗り出す。
「あれは改修後、かなり安全性も上がっていたはずだ! 救われた者も多いと報告が――」
「はい。そこは否定しません」
たづなは頷いた。
実際、あのVRは問題ばかりではなかった。使い方と強度さえ間違えなければ、怪我や事情で現地に行けないウマ娘たちの心を支える道具になった。
それは間違いない。
問題は。
「この子の志望動機欄です」
「志望動機?」
理事長が資料を覗き込む。
そこには、丁寧な文字でこう書かれていた。
スピカさんの歌に励まされ、もう一度走りたいと思いました。
また、最強メンタル計画さんの作ったVRに救われ、私もいつか誰かの希望になれるようなウマ娘になりたいです
理事長は読んだ。読んで、口元をほころばせた。
「よいではないか」
「はい。ここまでは、とてもよいです」
「ここまでは?」
たづなは、次の備考欄を指差した。
興味分野:リハビリ、メンタルケア、応援体験、環境化、日常に溶け込む支援
理事長の表情が止まった。
たづなの声が、わずかに低くなる。
「理事長」
「……うむ」
「環境化、です」
「……うむ」
「日常に溶け込む支援、です」
「……うむ」
「この単語の組み合わせには、覚えがありますね?」
理事長は、ゆっくりと視線をそらした。
覚えがありすぎた。ありすぎて、胃が少し痛くなる。
音声。VR。静止画。立体物未遂。香り。料理。ハンドクリーム。リップクリーム。そして数々の封印物。
すべては最初、だいたい綺麗な目的から始まった。
誰かを応援したい。助けたい。鍛えたい。日常を少しよくしたい。
その想い自体は本物だった。本物だからこそ厄介だった。善意と技術力とスピカ特効が合体すると、トレセン学園ではだいたい金庫が増える。
「……たづな」
「はい」
「この子は、要観察だな」
「はい」
「だが、最初から疑うのはよくない」
「もちろんです」
たづなは名簿を閉じた。
その表情は穏やかだった。しかし、目だけは完全に実務モードに入っていた。
「まずは普通の新入生として迎えます。ただし、寮長と保健室には共有します」
「うむ」
「最強メンタル計画さんとの接触タイミングも、少し注意しましょう」
「……接触したらどうなると思う?」
たづなは、少し考えた。
その想像は難しくなかった。
なんちゃって白衣の問題児。長い車いす生活を経て、VRに救われた新入生。お互いに善意がある。お互いに前向きである。お互いに誰かのためになりたいと思っている。そして片方は、すでに危険物作成の実績がある。もう片方は、憧れと感謝で脳が焼けている。
「……相乗効果が起きます」
「やはりか」
「はい」
「爆発するか?」
「爆発はしないと思います」
「そうか」
「ただ、学園の日常に溶け込む何かが生まれる可能性はあります」
「それは爆発より厄介ではないか?」
「はい」
二人は黙った。
春風が窓を揺らす。穏やかな日差し。新学期。新入生。希望。未来。
そして、波乱。
「……よし」
理事長は立ち上がった。
「新入生歓迎ッ! まずは温かく迎えることが肝要だ!」
「はい」
「そして危険物は未然に防ぐ!」
「はい」
「たづな!」
「はい」
「金庫の空きは?」
「ありません」
「倉庫は?」
「一部、封印物で埋まっています」
「……増設するか」
「予算案を作っておきます」
新学期早々、理事長室では金庫増設の話が出ていた。
だが、まだ誰も知らない。
校門の前で春風を浴びる新入生が、スピカに焼かれ、最強メンタル計画ちゃんに焼かれ、そして自分も誰かの希望になりたいと願っていることを。
その願いが美しいことを。美しいからこそ、とても危ないことを。
彼女はもう一度、校門を見上げた。
胸が高鳴る。足は少し震えている。けれど、それは恐怖だけではない。期待だった。希望だった。走りたいという、まっすぐな願いだった。
「……行こう」
彼女は一歩を踏み出した。
自分の足で。
トレセン学園へ。
春風が吹く。桜が舞う。新しい季節が始まる。
そして、誰もがまだ知らないところで。
彼女の鞄の中のノートが、静かに一ページ分の余白を光らせていた。
そこに、後日こう書き込まれることになる。
『案5:スピカさん概念を安全に空気へ溶かす方法』
波乱の予感しかしなかった。
掲示板:【新入生】今年の入学組、なんか空気変わってない?【春】
レス 1〜50
新学期だあああああああああああああああああ
春だあああああああああああああああああ
新入生だああああああああああああああああ
落ち着け。
いや無理でしょ
今年の新入生、なんか空気違う
毎年言ってない?
言ってるけど今年は本当に違う
理由:スピカきゅん登場後初の本格的な新年度
あっ
あっ
つまり最初からスピカきゅんを知ってる状態で入学してくる世代……?
やばくない?
すでに焼けてる子たちが入ってくるってこと?
こんがり新入生
言い方
でも事実
去年までは在校生がスピカきゅんに焼かれていく過程があった
今年は焼かれた状態で入学してくる
地獄かな?
天国だよ
天国と地獄は同時に存在する
スピカきゅんが歌ってくれる世界は天国
スピカきゅんが歌ってくれる世界に耐えられない私たちの脳は地獄
哲学やめろ
校門で新入生見かけたけど、目がキラキラしててかわいかったよ
なお、何人かは校門見た瞬間に「ここでいつかスピカさんに……」って顔してた
わかる顔
経験者の顔
表ではスピカさん
心ではスピカきゅん
礼儀正しい焼け方
新入生が校門前で泣きそうになってたから心配して声かけたら
「ここで走れるんですね」って言っててこっちが泣きそうになった
重いのやめて
春から泣く
その子、もしかして長い間車いすだった子?
あ、知ってるかも
リハビリ頑張って今年入学した子でしょ?
えっすごい
すごいよ
普通に尊敬する
自分の足で校門くぐるの、めちゃくちゃ意味あるやつじゃん
春風、仕事しすぎ
その子、スピカきゅんの配信に励まされてたらしいよ
うわあああああああああああああ
やめて
泣く
スピカきゅん、本当にいろんな子の人生に刺さってるんだな……
勝つ子だけじゃなくて、走ろうとしてる子にも届くのがスピカきゅんなんだよ
でもその子、スピカきゅんだけじゃなくて例のVRにも救われたらしい
例のVR
例のVR
例のVR
正式名称を言え
正式名称が時期によって変わるから……
スピカライブVRで通じるやつ
最強メンタル計画ちゃん製のやつか
あっ
レス 51〜100
感動話から急に不穏な単語が出てきた
いやでも改修版VRは本当に救われた子多いから
それはそう
怪我で現地行けない子とか、車いす生活の子とか、入院中の子とか
あれで前向けた話は普通に聞く
危険物だけど救済装置でもあるの、評価に困る
最強メンタル計画ちゃんの成果物だいたいそれ
危険物
ただし誰かを救う
問題児
ただし善意は本物
封印対象
ただし技術力は高い
たづなさんの胃
ただし犠牲になる
最後だけただの被害者
話戻すけど、その新入生ちゃんが最強メンタル計画ちゃんにも憧れてるらしい
スピカきゅんに救われた
最強メンタル計画ちゃんのVRにも救われた
だから二人に憧れている
待って
すごく綺麗な話なのに警報が鳴ってる
二重焼き新入生
二重焼きってお菓子みたいに言うな
中身スピカ餡と最強メンタル餡
食べたら気絶しそう
善意
技術
スピカ
この三つが揃うと危険物になる
方程式やめろ
最強メンタル計画ちゃんが証明済みなんだよなあ
しかも今回、車いす生活とリハビリ経験があるんでしょ?
つまり「不自由な子にも届く支援」を考える可能性がある
いいことじゃん
いいことだよ
ただし「日常に溶け込む」とか言い出したら終わり
その単語は封印しろ
でも新入生ちゃんが最強メンタル計画ちゃんに会ったらどうなるんだろ
泣きながら感謝する
最強メンタル計画ちゃんも泣く
同室の子も泣く
たづなさんも少し泣く
理事長も泣く
いい話じゃん
そこで終わればな
終わらないんだろうなあ
最強メンタル計画ちゃん「私の作ったものが誰かの役に立った……!」
新入生ちゃん「私も誰かの役に立つものを作りたいです……!」
最強メンタル計画ちゃん「一緒に考えよう!」
やめろおおおおおおおおおおおおおお
美談が災害発生手順に変わった
たづなさん呼んで
たづなさんはもう察してそう
でも新入生ちゃんを警戒対象みたいに扱うのは違うよね
それは本当にそう
長いリハビリ頑張って入学してきた子なんだから、そこはちゃんと祝いたい
ようこそトレセン学園へ
ようこそ
ようこそ
レス 101〜150
走れるようになってよかったね
最強メンタル計画ちゃんのせいでノートへの信頼が地に落ちてる
普通のノート
赤ペンノート
危険物企画書
封印対象
分類が嫌すぎる
理事長「新春封印ッ!」
言いそう
言わないで
春風にスピカ概念乗せられたらどうなるの?
外に出た瞬間、応援されてる気がする
最高じゃん
最高だから危険なんだよ
屋外授業が終わる
春風が吹くたびに寮長が走って回収する学園
地獄絵図
でもちょっと体験したい
出たよ
新入生ちゃん、最強メンタル計画ちゃんに弟子入りしたがりそう
弟子入りはまずい
でも最強メンタル計画ちゃん、たぶんめちゃくちゃ喜ぶよ
たぶん最強メンタル計画ちゃんは真顔で固まってから泣く
そして「もっと頑張らなきゃ」って言う
誰かの役に立てた
→もっと役に立つものを作ろう
→危険物
黄金ルート
黄金じゃなくて封印ルート
新入生ちゃんと最強メンタル計画ちゃんが会う前に、赤ペン先生を同席させろ
赤ペン先生の負担が増える
でも赤ペン先生ならやってくれる
危険物を止め続けた実務経験
問題児とのコミュニケーション能力
文章添削能力
危機察知能力
救助能力
普通に有能
自己評価低いのだけが問題
そこは最強メンタル計画ちゃんが支えるんだよ
いい関係
最強メンタル計画ちゃんも最初はただ頑張り屋だったんだよ
今もただ頑張り屋だよ
頑張る方向と速度がおかしいだけで
ウマ娘の脚力で明後日へ走る女
名言
新入生ちゃんには幸せになってほしい
ほんとに
頑張ってほしい
無理しないでほしい
また走れるようになっただけでもすごい
勝ちたいって思えるのもすごい
スピカきゅんに祝ってもらえる日が来たらいいね
スピカきゅんに直接「おめでとうございます」って言われたら?
無理
でもそれで幸せならいいか……
よくない
救護班を呼べ
新入生ちゃんが勝つ
スピカきゅんが祝う
最強メンタル計画ちゃんが泣く
赤ペン先生も泣く
たづなさんが救護
理事長が号泣
掲示板が落ちる
未来予知やめろ
レス 151〜200
たぶん当たる
最初は温かい
その後ノートが開く
ノートを開く音が怖い世界
でも夢を書くのは大事だから……
夢と企画書の境界線を学んでほしい
そこは赤ペン先生の出番
まとめると
今年の新入生はスピカ後世代
その中に車いす生活から復帰した子がいる
スピカとVRに救われている
最強メンタル計画ちゃんにも憧れている
ノートの気配がする
春風が危ない
最後の一文が意味不明なのに理解できるのが嫌
春風が危ない
今年の春の標語にするな
トレセン学園、いい場所だな
金庫が多い以外はね
倉庫も埋まりつつあるぞ
いい場所だな……?
希望と封印物が共存する学園
今年も春が来たなあ
春風が吹くたびに、何か始まりそうで怖い
でも、始まるのが楽しみでもある
それはそう
新入生ちゃん、ようこそ
ようこそトレセン学園へ
ノートは一回赤ペン先生に見せて
ようこそ、春風の問題児候補
候補で止まれ
頼むから候補で止まれ
でもたぶん止まらない
知ってた
春だなあ
春だねえ
春風が危ないねえ
だから標語にするなって!
── 初会合:感動と赤ペンは同時にやってくる ──
新学期初日。
トレセン学園の空気は、いつもより少しだけ浮き立っていた。
校舎の廊下には、新しい制服に袖を通した新入生たちの姿がある。まだ地図を見ながら迷っている子。先輩に道を聞いて、緊張で耳をぴんと立てている子。寮へ向かう荷物を抱えながら、きょろきょろと周りを見回す子。
春の光が窓から差し込み、どこか学園全体がやさしく明るい。
その日の授業は、新学期ということもあって早めに終わった。トレーニングも本格始動は明日以降。つまり、いつもなら慌ただしいトレセン学園にしては珍しく、少しだけ空白の時間ができていた。
寮の一室。
「……暇だね」
同室の子が、ベッドの上でゆっくり足を伸ばしながら呟いた。
机の前では、最強メンタル計画ちゃんが椅子に座っている。
なお、今日は珍しくノートを開いていない。ペンも持っていない。机の上に危険な器具もない。なんちゃって白衣も着ていない。
完全に平和だった。奇跡のような時間である。
「暇だねえ」
最強メンタル計画ちゃんも、椅子の背もたれに体を預けて、ぼんやりと天井を見上げていた。今日は本当に何もしていない。いや、正確には「何もしていないように見える」だけで、頭の中では何かしら考えている可能性はあった。だが、少なくとも机の上に新しい試作品はない。床にもない。ベッドの下にも、たぶんない。
同室の子は、念のため朝に確認していた。
ない。
今日は本当に安全な日である。
「新学期って、なんかそわそわするよね」
「わかる。新入生ちゃんたち、みんなきらきらしてた」
「うん。かわいかったね」
「私もあんな感じだったのかな」
「……うーん」
「なんで迷うの?」
「いや、最初は普通にかわいかったよ」
「最初は?」
「最初は」
同室の子は遠い目をした。
思えば、彼女も最初から危険物を作っていたわけではない。真面目で、頑張り屋で、不器用で、少し思い込みが激しくて。努力の方向を間違えやすいだけの、普通のウマ娘だった。
いや、その時点で少し普通ではなかった気もする。
しかし、ここまでになるとは誰が思っただろう。音声。VR。静止画。立体物未遂。匂い。料理。ハンドクリーム。リップクリーム。そして、その他もろもろ。
数々の事件が、同室の子の脳裏を走馬灯のように流れていった。
「……どうしたの?」
「ううん。平和だなって」
「そうだねえ」
最強メンタル計画ちゃんは、ふにゃりと笑った。同室の子も笑い返す。
今日は平和だ。今日は何も起きない。
新学期初日の、のんびりした午後。春風が窓を揺らし、カーテンがふわりと動く。
その穏やかな空気を破るように。
こんこん、と部屋の扉がノックされた。
「はーい」
同室の子が立ち上がる。来客の予定はない。寮長だろうか。あるいは、同じ階の子が何か借りに来たのかもしれない。
彼女は何の警戒もなく、扉を開けた。
そこに立っていたのは、知らないウマ娘だった。
まだ少し制服が硬そうだった。着慣れていない感じがある。新品の鞄。丁寧に整えられた髪。緊張で少しだけ揺れている耳。
新入生だ、と同室の子はすぐにわかった。
「あ、こんにちは」
同室の子が声をかけると、新入生ははっとしたように背筋を伸ばした。
「こ、こんにちは!」
ぺこり、と深く頭を下げる。勢いがよすぎて、耳まで一緒にぴょこんと動いた。
真面目そうな子だった。同室の子は少し微笑む。
「えっと、どうしたの? 迷子?」
「あ、いえ、その……」
新入生は両手で鞄の紐をぎゅっと握った。視線が一瞬、部屋の奥へ向かう。
机の前でこちらを見ている最強メンタル計画ちゃんに、その視線が止まった。
その瞬間。
新入生の瞳が大きく揺れた。まるで、ずっと探していた人を見つけたような顔だった。
「……あ」
小さく声が漏れる。
最強メンタル計画ちゃんも、ぱちぱちと瞬きをした。
「私?」
「は、はい……!」
新入生は、もう一度深く頭を下げた。
「突然すみません! 私、今日入学した新入生です!」
「あ、うん。こんにちは」
「こんにちは」
最強メンタル計画ちゃんも、少し慌てて立ち上がる。
新入生は顔を上げた。その瞳には、すでに涙が浮かんでいた。
「え、えっと、大丈夫?」
「はい。大丈夫です。大丈夫、なんですけど……」
新入生は、胸に手を当てた。何度も言葉を選ぶように、唇を動かす。
そして、まっすぐ最強メンタル計画ちゃんを見た。
「私、ずっと……車いすで生活していました」
部屋の空気が、少しだけ変わった。
春の穏やかさの中に、静かな重みが落ちる。
「一年くらい、ほとんど歩けなくて。レースどころか、トレセン学園に入ることも、もう無理かもしれないって思っていました」
新入生の声は震えていた。けれど、言葉は途切れなかった。
「リハビリは、苦しかったです。走っている子を見るのもつらかったです。夢を見ても、目が覚めたら足が動かない日があって……もう、自分は戻れないのかなって」
同室の子は、言葉を失った。最強メンタル計画ちゃんも、ただ黙って聞いていた。
「でも、スピカさんの配信を見て……もう一度、走りたいって思えました」
新入生の表情が、少しだけ明るくなる。
「勝つ子だけじゃなくて、走ろうとしているウマ娘のことも、ちゃんと見てくれている気がして。私も、もう一度頑張っていいんだって思えたんです」
スピカ。
その名前が出た瞬間、部屋の中にいる二人の耳も少し動いた。
それはわかる。痛いほどわかる。スピカの言葉が、どれだけ多くのウマ娘に届いているか。この学園にいる者なら、誰もが知っている。
だが、新入生はそこで終わらなかった。
「それから……」
彼女は、最強メンタル計画ちゃんを見つめた。
涙が、ぽろりとこぼれた。
「先輩の作ったVRにも、救われたんです」
「……え」
最強メンタル計画ちゃんの声が、小さく漏れた。
新入生は、両手を胸の前で握る。
「現地には行けませんでした。車いすで、長く移動するのも難しくて。ライブを見たいのに、目の前で見たいのに、ずっと画面越しで……でも、先輩のVRで、少しだけそこに行けた気がしたんです」
その声には、強い感謝があった。
「もちろん、すごく刺激が強くて……気絶もしました」
「あっ」
同室の子が小さく反応した。
そこはやっぱり気絶するのか。
しかし、新入生は恥ずかしそうに笑った。
「でも、目が覚めた時、泣いていました。怖かったんじゃなくて……まだ私は、あの場所に行きたいんだって思えたからです。まだ走りたいんだって。まだ夢を諦めたくないんだって」
最強メンタル計画ちゃんの耳が、震えた。
新入生は、深く息を吸う。そして、頭を下げた。
「ありがとうございました」
静かな声だった。けれど、部屋の中にまっすぐ響いた。
「先輩が作ってくれたもののおかげで、私は今日、自分の足でトレセン学園に来られました」
「……」
最強メンタル計画ちゃんは、何も言えなかった。目を大きく見開いている。それから、ゆっくりと唇が震えた。
「私の……?」
「はい」
「私が作ったもので……?」
「はい」
「救われた……?」
「はい」
新入生は、もう一度頷いた。
最強メンタル計画ちゃんの瞳に、じわりと涙が浮かぶ。
「そっか」
声が震えていた。
「そっかあ……」
彼女は、両手で口元を押さえた。何かをこらえるように。泣かないように。けれど、こらえきれなかった。
ぽろぽろと涙が落ちる。
「よかった……」
小さな声だった。
「ほんとに、よかった……」
その言葉に、新入生もまた泣いた。同室の子も、思わず目元を押さえる。
ああ。
これは、よかった。本当によかった。
これまで、危険物だの封印対象だの金庫行きだの散々言われてきた。もちろん実際に危険だった。何度も気絶者を出した。理事長も巻き込まれた。たづなさんの胃も削った。同室の子自身も何度頭を抱えたかわからない。
けれど。それでも。
あの子が本気で誰かの役に立ちたいと思っていたことを、同室の子は知っている。
その想いが、誰かに届いていた。しかも、こんなふうに。もう走れないかもしれないと思っていた子の背中を押していた。
それは。
泣いてしまう。泣かずにいられない。
「……よかったね」
同室の子は、少し涙声で言った。
最強メンタル計画ちゃんは、ぐしぐしと目元を拭きながら頷いた。
「うん……うん……」
新入生も、何度も頭を下げる。
「先輩、本当にありがとうございます」
「そんな、私なんて……」
「私にとっては、本当に大きなことだったんです」
「うう……」
この瞬間だけなら、間違いなく美談だった。
部屋の中は優しさに包まれていた。新学期の午後。春風。感謝。涙。再起。希望。
とても美しい場面だった。
ここまでは。
「それで、私、思ったんです」
新入生が涙を拭きながら、顔を上げた。
その瞳が、きらきらしていた。
同室の子は、なぜか背筋に小さな寒気を覚えた。
「私も、先輩みたいに」
新入生は鞄に手を伸ばした。
「誰かの役に立つものを作りたくて」
同室の子の耳がぴくりと動く。最強メンタル計画ちゃんの目が、さらに潤んだ。
「え……」
「だから」
新入生は、鞄から一冊のノートを取り出した。
新品のノート。表紙には、丁寧な字でこう書かれていた。
『リハビリ経験を活かしたメンタル強化研究ノート』
同室の子の呼吸が止まった。
ノート。研究。メンタル強化。
三つの単語が並んだ瞬間、脳内で警報が鳴り響いた。
だが、感動の余韻が強すぎて、体が動かない。
「案を考えてきたんです!」
新入生は、満面の笑みでノートを開いた。その顔は、希望に満ちていた。最強メンタル計画ちゃんは、目を輝かせた。
「案……!」
「はい!」
新入生は、ノートを差し出す。最強メンタル計画ちゃんが受け取る。
同室の子は、まるでゆっくり落ちていく花瓶を見ているような気持ちで、それを見ていた。
止めなければ。止めなければならない。でも、さっきまで泣いていた。美談だった。ここで止めるのは、あまりにも空気が読めないのではないか。
いや、空気を読んでいる場合ではない。
しかし、新入生の瞳があまりにも綺麗だった。最強メンタル計画ちゃんの表情も、あまりにも嬉しそうだった。
同室の子は一瞬、完全に放心した。
その一瞬が、致命的だった。
「えっと、まず一つ目が……」
最強メンタル計画ちゃんがページをめくる。そこには、丁寧な字でこう書かれていた。
『スピカさん環境化案』
「おお……」
最強メンタル計画ちゃんが唸った。
同室の子の魂が半分抜けた。
出た。出てしまった。環境化。どこかで見た。何度も見た。見てはいけないはずのフレーズだった。
「環境化……!」
最強メンタル計画ちゃんの声が震えている。感動で。興奮で。そして、たぶん共鳴で。
「先輩の真・最強メンタル計画を参考にしました!」
「私の……!」
「はい! 日常に溶け込む支援という考え方、すごく素敵だと思って!」
「日常に溶け込む支援……!」
最強メンタル計画ちゃんが、胸を押さえる。
「わかる……すごくわかる……!」
同室の子は、ようやく動き出そうとした。しかし二人の会話は早かった。
「でも、先輩の成果物は刺激が強すぎるものもあったと思うんです」
「うん……それは、本当にそう」
最強メンタル計画ちゃんは真剣に頷いた。自覚はある。自覚はあるのだ。そこが厄介である。
「だから私は、もっと安全に、もっとやさしく、でも日常の中でずっと励まされるようなものを考えたくて」
「なるほど……!」
「リハビリ中って、ずっと頑張り続けるのが大変なんです。だから、ふとした時に背中を押してくれるようなものがあれば、きっと助かる子がいると思って」
「すごい……すごいよ……!」
最強メンタル計画ちゃんは、もう半泣きだった。
「私、そういう視点、足りなかったかもしれない……!」
「そんなことないです! 先輩がいたから、私も考えられたんです!」
「うう……!」
また感動が戻ってきた。いい話である。内容だけ聞けば、本当にいい話である。
ただし、タイトルが『スピカさん環境化案』である。
同室の子の中で、感動と危機感が激しく衝突していた。
「具体的にはね」
新入生は、次のページを指差した。
「まず、スピカさんの声や映像は刺激が強すぎるので、直接使わない方がいいと思うんです」
「うんうん」
「そこは偉い!」
思わず同室の子が口を挟んだ。二人がこちらを見る。同室の子は咳払いした。
「ごめん、続けて」
新入生は嬉しそうに頷いた。
「はい! だから、直接の音声や映像ではなく、スピカさんから受け取った励ましの概念を、環境の中にやさしく配置します」
「概念を……配置……!」
最強メンタル計画ちゃんが前のめりになる。
「たとえば、歩行訓練のコースに、小さな光や風の演出を入れて、進むたびに応援されているように感じられる仕組みとか」
「おお……!」
「それなら音声なしでも、前に進めた感覚を得られると思うんです」
「すごい……!」
同室の子は一瞬だけ黙った。
今のは、意外とまともだった。直接スピカ音声を使わない。映像も使わない。歩行訓練の補助として、進行に応じた演出を入れる。安全性をきちんと考えれば、ありかもしれない。
ありかもしれないが。
次のページが怖い。
「それで、次はですね」
新入生がページをめくる。
『春風にスピカさん概念を乗せる』
同室の子は机に手をついた。
「待って」
「はい?」
「待って」
同室の子の声は低かった。新入生は不思議そうに首をかしげる。最強メンタル計画ちゃんは、目を輝かせたまま固まっている。
「春風……!」
「反応しないで!」
同室の子は即座に言った。
「でも、春風だよ? 新学期だよ? やさしく背中を押してくれる感じ、すごくよくない?」
「よくないとは言ってない! ただ、春風にスピカさん概念を乗せるという文章は危ない!」
「でも音声も映像も使わないよ?」
「そういう問題じゃない!」
新入生は、少し慌てて説明を始めた。
「えっと、実際に風へ何かを混ぜるという意味ではなくて、風が吹いた時に連動して小さな光の粒が道沿いに出るとか、リハビリ施設の窓際で春らしい香りを――」
「香り」
同室の子の声がさらに低くなった。
新入生が止まる。最強メンタル計画ちゃんも止まる。
部屋の温度が一度下がったような気がした。
「香りは、駄目」
同室の子は静かに言った。
「香りは、駄目」
大事なことなので二回言った。
新入生は、はっとしたように背筋を伸ばす。
「あ、はい! すみません! 先輩のV5関連資料を見て、香りは危険度が高いとわかっていたのに……!」
「見てたんだ」
「はい! 参考資料として!」
同室の子は片手で顔を覆った。
参考資料として。そうか。見ていたのか。見ていた上で来たのか。
最強メンタル計画ちゃんは、少し恥ずかしそうに頬をかいた。
「あの時は、いろいろあって……」
「いろいろで済むかな」
「うう……」
新入生は慌ててページに手を置いた。
「でも、香りはまだ案の段階です! 実装優先度は低いです!」
「低いじゃなくて、削除」
「削除……!」
「削除」
同室の子は、机の上のペン立てへ手を伸ばした。
赤ペン。
それは、この部屋における最後の防衛線である。
彼女は赤ペンを握った。
瞬間、空気が変わった。
最強メンタル計画ちゃんがびくりとした。新入生も、何かを察して背筋を伸ばす。
同室の子は、ノートを指差した。
「ごめんね。いい話だった。本当にいい話だったし、あなたの気持ちはすごく素敵だと思う」
「は、はい」
「でも、このままだと危ない」
「危ない……」
「危ない」
同室の子は、はっきりと言った。
「だから添削します」
赤ペン先生が、降臨した。
最強メンタル計画ちゃんは、どこか懐かしそうな顔をした。新入生は、緊張と尊敬が混ざった顔で見つめている。
「まずタイトル」
同室の子は赤ペンを走らせた。
『スピカさん環境化案』
その上に、大きく線を引く。そして横に書く。
『リハビリ支援用・低刺激応援環境案』
「スピカさんを前面に出さない」
「えっ」
「出さない」
「でも、スピカさんへの感謝が……」
「感謝はわかる。でもスピカさんを前面に出した瞬間、刺激物になる」
最強メンタル計画ちゃんが真剣に頷いた。
「それは本当にそう」
「あなたが言うと説得力があるね」
「うう……」
同室の子は次のページを見る。
『歩行訓練とスピカさん概念の連動』
赤線。
『歩行訓練と達成感演出の連動』
「概念を消す」
「概念も駄目ですか?」
「スピカさん概念は濃縮されると危険」
「濃縮……」
新入生は真剣にメモを取り始めた。最強メンタル計画ちゃんも、自分の机からノートを取り出した。
同室の子はそれを見て、目を細める。
「あなたは新しいノートを開かない」
「えっ」
「今は見るだけ」
「でも、学びが」
「見るだけ」
「はい」
最強メンタル計画ちゃんは、しゅんとしてノートを閉じた。だが、手元にはまだペンがある。
同室の子は無言で手を差し出した。
最強メンタル計画ちゃんは、そっとペンを渡した。
新入生はそのやり取りを見て、感動したように呟いた。
「すごい……信頼関係……」
「これは監視体制」
「監視体制……!」
なぜか新入生は尊敬の眼差しを向けた。同室の子は頭が痛くなった。
ページをめくる。
『春風にスピカさん概念を乗せる』
赤ペンが止まった。
同室の子は深呼吸した。
これは大物だ。どう直すべきか。春風。スピカ概念。乗せる。全部危ない。
だが、原案の中には「自然なきっかけで前向きな気持ちになる」という良い部分もある。全消しではなく、救える部分を救わなければならない。
それが赤ペン先生の仕事である。
「これは……」
同室の子は、慎重に赤ペンを入れた。
『季節感を利用した低刺激モチベーション演出』
「こう」
「おお……!」
新入生が目を輝かせた。
「意味は残ってるのに危険度が下がってる……!」
「すごい……!」
最強メンタル計画ちゃんも感動している。
同室の子は少しだけ顔を赤くした。
「そんな大げさなものじゃないよ」
「すごいです! 先輩!」
「先輩……」
同室の子は一瞬固まった。
新入生に、まっすぐ尊敬の目で見られている。いつもは隣の問題児を止める役。赤ペンで添削する役。危険物を回収する役。自分自身をすごいと思うことは、あまりない。
けれど、今。
その新入生は、本気で自分のことも見ていた。
「最強メンタル計画先輩もすごいですけど、赤ペン先輩もすごいです」
「赤ペン先輩」
同室の子は呆然とした。
最強メンタル計画ちゃんが、ぱあっと顔を明るくする。
「そう! この子、すごいんだよ!」
「ちょっと」
「いつもノートを見てくれて、危ないところを直してくれて……でも、やりたいこと、全部は否定しないでくれる」
「ちょっと」
「だから……私がここまで来られたの、この子のおかげでもあると思う」
「やめて」
同室の子の声が小さくなった。
新入生は、さらに目を輝かせた。
「すごい……!」
同室の子は赤ペンを握りしめたまま、顔をそらした。
胸の奥が少し熱い。
まずい。泣きそうになる。でも今泣くと、赤ペンが止まる。赤ペンが止まると、企画が進む。企画が進むと、危険物が生まれる。
泣いている場合ではない。
「……続けます」
彼女は実務に戻った。
その切り替えの速さに、最強メンタル計画ちゃんと新入生は同時に姿勢を正した。
「次」
ページをめくる。
『常時励まし空間』
赤線。
『任意起動式・短時間応援演出』
「常時は駄目」
「常時は駄目……」
「任意起動。短時間。停止ボタン必須」
「停止ボタン必須!」
新入生がメモする。最強メンタル計画ちゃんも頷く。
「停止ボタンは大事……」
「あなたは過去に何回それを軽視したかな?」
「うう……」
「次」
『低刺激なので救助要員不要』
同室の子の目が鋭くなった。
赤線。
『初期試験時は必ず救助要員を配置』
「救助要員は必須」
「でも低刺激なら……」
「必須」
「はい」
最強メンタル計画ちゃんが真顔で言った。
「救助要員は本当に大事だよ」
「自分の経験から?」
「うん」
「説得力がすごいです……!」
「次」
『スピカさん本人にいつか見てもらいたい』
同室の子は手を止めた。
これは、消しづらかった。新入生の願いそのものだからだ。スピカに救われた。いつか見てもらいたい。それは自然な感情だ。
けれど、スピカ本人を巻き込むとなると、一気に話が大きくなる。安全面、権利面、精神面、周囲への影響。考えることが多すぎる。
同室の子は、少し考えてから赤ペンを入れた。
『完成度と安全性を確認できたら、いつか相談できるようにしたい』
「夢は残す。でも順番を作る」
新入生は、その赤字をじっと見た。そして、ゆっくり頷いた。
「……はい」
声が少しだけ震えていた。
「ありがとうございます」
同室の子は、優しく言った。
「夢を消したいわけじゃないから」
新入生の目に、また涙が浮かんだ。
「はい……」
最強メンタル計画ちゃんも、鼻をすすった。
「赤ペン先生……」
「その呼び方はやめて」
「でも先生だよ」
「やめて」
同室の子はため息をついた。だが、その表情はやわらかかった。
その後も添削は続いた。
『スピカさんを感じる空間』
→『前向きな気持ちを支える空間』
『気絶しない程度の幸福感』
→『心拍数・表情・体調変化を確認できる範囲の快適感』
『慣れれば出力を上げられる』
→『出力上限は第三者が管理』
『理事長にも体験してもらう』
→『理事長には完成後、安全確認済みのものだけ相談』
『たづなさんに提出』
→『最初からたづなさんに相談』
「ここ重要」
同室の子は、赤ペンで二重丸をつけた。
「最初からたづなさんに相談」
「最初から……」
最強メンタル計画ちゃんが小さく復唱する。
「途中じゃなくて?」
「最初から」
「完成してからじゃなくて?」
「最初から」
「試作してからじゃなくて?」
「最初から」
「はい」
新入生も真剣に頷いた。
「最初から相談します」
「うん。偉い」
同室の子はほっとした。
まだ間に合う。この子は真面目だ。素直でもある。方向さえ整えれば、きっと本当に誰かを助けるものを作れるかもしれない。
そう思った瞬間だった。
最強メンタル計画ちゃんが、ぽつりと言った。
「でも、二人で考えたら、もっといいものになりそうだね」
同室の子の耳が動いた。
新入生の顔がぱっと明るくなる。
「はい!」
「私も、リハビリのことは知らないから……教えてほしい」
「もちろんです! 私でよければ!」
「一緒に頑張ろう!」
「はい! 一緒に頑張りましょう!」
二人は、感極まったように手を取り合った。
春の日差しが差し込む部屋。涙を浮かべた新入生。自分の成果物が誰かを救ったことを知った先輩。手と手が重なる。
美しい。とても美しい。
同室の子は、その光景を見て。
一瞬だけ、また泣きそうになった。
そして次の瞬間。
机の上にある二冊のノートを見た。
一冊は、新入生のノート。もう一冊は、いつの間にか最強メンタル計画ちゃんが再び開いていた自分のノート。
「開いてる」
同室の子の声が低くなった。
最強メンタル計画ちゃんが固まる。
「いつ開いたの?」
「えっと……一緒に頑張ろうって思ったら、自然と……」
「自然と開かない」
「ごめんなさい」
同室の子は、赤ペンをもう一本取り出した。
最強メンタル計画ちゃん用。新入生用。
二刀流である。
「二人とも、座って」
「はい」
「はい!」
最強メンタル計画ちゃんと新入生は、並んで椅子に座った。
同室の子は二冊のノートを前に置く。
その姿は、完全に先生だった。赤ペン先生だった。
「まず、共同研究っぽいことをするなら、最初にルールを決めます」
「ルール」
「はい!」
「一つ。スピカさん本人の音声・映像・名前を勝手に使わない」
「はい」
「はい!」
「二つ。五感に直接作用するものは、必ず事前相談」
「はい……」
「はい!」
「三つ。常時発動は禁止」
「はい」
「はい!」
「四つ。理事長を試験者にしない」
「はい」
「えっ」
最強メンタル計画ちゃんが小さく反応した。
同室の子は無言で見た。
「はい」
「よし」
「五つ。たづなさんには最初から相談」
「はい」
「はい!」
「六つ。新しい案を思いついたら、まず私に見せる」
「えっ」
今度は新入生が反応した。
「いいんですか……?」
その声は、驚きと嬉しさが混じっていた。
同室の子は少しだけ目を伏せる。
本当は、自分から仕事を増やすようなものだ。でも。この子の気持ちは、雑に否定したくなかった。最強メンタル計画ちゃんの時も、そうだった。
危ないものは止める。でも、頑張りたい気持ちまでは止めない。誰かを助けたいという気持ちまでは、消さない。
そのための赤ペンだ。
「うん。見せて」
同室の子は言った。
「危ないところは直す。でも、全部駄目とは言わないから」
新入生の瞳が、また潤んだ。
「ありがとうございます……!」
「泣かない。インクに落ちる」
「はい!」
新入生は慌てて目元を拭った。
最強メンタル計画ちゃんが、にこにことその様子を見ている。
同室の子は、その顔を見て少しだけ警戒した。
「あなたも」
「え?」
「勝手に盛り上がって新シリーズを始めない」
「……」
「返事」
「はい」
「新しいノートを買わない」
「……」
「返事」
「はい」
「なんちゃって白衣を着て共同開発会議を開かない」
「……」
「返事」
「はい」
新入生が小さく手を挙げた。
「あの」
「どうしたの?」
「なんちゃって白衣は、だめなんですか?」
同室の子は目を閉じた。
最強メンタル計画ちゃんが、少し期待した顔をする。
「だめです」
「はい!」
新入生は素直に頷いた。
危なかった。非常に危なかった。この子はたぶん、与えれば着る。そして二人で並ぶ。その光景が浮かび、同室の子は頭を抱えたくなった。
「それと」
同室の子は、二人のノートにそれぞれ大きく書いた。
目的:誰かを助けること
手段:安全第一
スピカさんは濃縮しない
「最後」
最強メンタル計画ちゃんが読んで、真剣に頷いた。
「スピカさんは濃縮しない……」
新入生も、真剣に頷く。
「はい。濃縮しません」
「本当に?」
「はい!」
「概念も?」
「なるべく薄めます!」
「薄める前提なんだ……」
同室の子は疲れたように笑った。
それでも、少し安心した。少なくとも、今この場で危険物は生まれていない。ノートは赤ペンで制御下にある。二人とも素直に聞いている。初動対応としては、かなり成功していると言っていい。
その時、廊下の方から足音が聞こえた。
同室の子は、二冊のノートを見下ろす。
赤ペンだらけのページ。嬉しそうな最強メンタル計画ちゃん。真剣に学ぼうとしている新入生。
春風が窓を揺らす。
美談だった。間違いなく、美談だった。
そして同時に。
新たな火種だった。
「……ねえ」
最強メンタル計画ちゃんが、そっと言った。
「なに?」
「この子の案……ちゃんと安全にできたら、すごいと思う」
「うん」
同室の子は頷いた。それは本当に思う。
「だから、頑張りたい」
「うん」
「勝手に走らないようにする」
「うん」
「赤ペン、お願いしてもいい?」
同室の子は、少しだけ驚いた。
最強メンタル計画ちゃんは、まっすぐこちらを見ていた。
以前よりも、少しだけ落ち着いた目だった。
同室の子は、ふっと笑う。
「もちろん」
新入生が、ぱあっと笑った。
「よろしくお願いします、赤ペン先輩!」
「その呼び方はやめて」
「はい、赤ペン先輩!」
「やめてって言ったよね」
最強メンタル計画ちゃんがくすくす笑う。新入生も笑う。同室の子も、少しだけ笑った。
その笑い声は、春の午後にふさわしい穏やかなものだった。
だが、机の上のノートには、赤字でこう書かれている。
共同案:要監視
スピカ概念:希釈必須
春風:現時点では保留
波乱は、まだ始まったばかりだった。
掲示板:【速報】最強メンタル計画ちゃんと新入生ちゃん、会合したらしい【相乗効果こわい】
レス 1〜50
始まったらしい
なにが?
なにがって言わなくてもわかるやつ
最強メンタル計画ちゃんと例の新入生ちゃんが会ったらしい
終わった
始まったって言ってるだろ
始まったから終わったんだよ
哲学やめろ
長い車いす生活だった新入生ちゃんが、最強メンタル計画ちゃんのVRに救われたって直接お礼を言ったらしい
泣いた
泣いた
泣いた
それは本当に泣く
自分の作ったもので救われた子が直接来るの、もう無理でしょ
今まで危険物だの封印対象だの言われてたけど、ちゃんと誰かを救ってたんだな……
そこは本当に忘れちゃいけない
善意は本物なんだよ
方向と出力がおかしいだけで
新入生ちゃんも泣いた
最強メンタル計画ちゃんも泣いた
同室の子も泣いた
いい話じゃん
ここまではいい話
ここまでは
新入生ちゃん「私も先輩みたいに誰かの役に立つものを作りたくて」
ノートを出したらしい
はい
終わりです
だから始まりだって
リハビリ経験を活かしたメンタル強化研究ノート
強い
強すぎる
これは真面目なやつ
真面目なやつだから怖い
真面目なまま危険物を作るんだよ
一番怖いやつ
スピカさん環境化案
はい封印
はい金庫
環境化って単語、もう禁止ワードにした方がいい
環〇化
伏せても怖い
濃縮スピカ概念は危険物
前例が多すぎる
音声、映像、静止画、匂い、味、触覚
五感全部焼け野原
次は環境か
範囲攻撃やめろ
個人用から環境型へ
兵器開発史みたいに言うな
なお目的はリハビリ支援
目的がよすぎる
レス 51〜100
だから困る
それを担保するのが赤ペン先生
赤ペン先生、初会合にいたらしい
いたの!?
よかった
命綱いた
本人の自己評価低いけど、もはや安全保障上の重要人物だよ
赤ペン先生は泣いたあと即赤ペン取り出したらしい
切り替えがプロ
感動と危機管理を両立する女
かっこいい
赤ペン先生がタイトルを添削したらしい
リハビリ支援用・低刺激応援環境案
おお
スピカさんが消えた
消すの大事
消してない、濃縮を避けてる
スピカさんは濃縮しない
標語にしろ
常時励まし空間
→任意起動式・短時間応援演出
有能
常時スピカ概念とか廊下で気絶者出る
低刺激なので救助要員不要
→初期試験時は必ず救助要員を配置
有能
救助要員不要は死亡フラグ
たづなさんに提出
→最初からたづなさんに相談
ここ一番大事
完成してから持ってくるな
事故ってから持ってくるな
最初から相談しろ
赤ペン先生が
季節感を利用した低刺激モチベーション演出
に直したらしい
すごい
意味を救いつつ危険度を下げている
添削のプロ
これもう普通に企画職いけるだろ
企業板が見てそう
見てるぞ
赤ペン先生は渡さん
二刀流赤ペン
かっこいい
新入生ちゃんも赤ペン先輩って呼び始めたらしい
定着するやつ
本人は嫌がってそう
嫌がりながら面倒見るんだろうな
そういうところ好き
最強メンタル計画ちゃんが「この子すごいんだよ!」って赤ペン先生を新入生ちゃんに紹介したらしい
尊い
最強メンタル計画ちゃん、赤ペン先生のこと大好きだよね
赤ペン先生がいたからここまで来られたってちゃんと言えるの偉い
問題児だけど、いい子なんだよ
レス 101〜150
赤ペン先生の自己評価に効くやつ
効け
もっと効け
混ぜるな危険
混ざった
最強メンタル計画ちゃんには足りなかった当事者視点が新入生ちゃんにある
新入生ちゃんには技術面の先輩がいる
赤ペン先生が安全面を見る
ちゃんと回れば良いチームじゃん
ちゃんと回れば
ちゃんと回れば
ちゃんと回れば
三回言った
最強メンタル計画ちゃんも最近ちゃんと聞くようになってる
成長してるんだよな
成長してるからこそ次の段階に進む
進むな
成長イベントが新たな危険物フラグになるの、この子だけだろ
美談バリア
やめろ
長いリハビリ乗り越えて入学してる時点で強いよ
焼けてるけど強い
強いけど焼けてる
この世界、だいたいそう
スピカさんは濃縮しない
最初からたづなさんに相談
常時発動は禁止
理事長を初期試験に入れない
善意と努力は見習っていい、安全確認不足は見習うな
掲示するべき
研究室の壁に貼れ
研究室を作るな
でも今回はちゃんと安全な方向に行けるかもしれない
期待はしてる
新入生ちゃんの当事者視点は本当に貴重
リハビリ中の孤独とか、現地に行けない悔しさとか、焦りとか
経験した子にしかわからないことがある
そこに最強メンタル計画ちゃんの技術力が乗る
怖い
でも強い
そこに赤ペン先生の制御が乗る
期待
そして理事長の好奇心が乗る
恐怖
たづなさんの胃痛が乗る
悲劇
スピカきゅん本人は何も知らない
いつもの
夢を消さずに順番を作るのが偉い
ただ止めるだけじゃないんだよね
危ないところは直す
でも、やりたい気持ちは否定しない
赤ペン先生、本当に先生じゃん
新入生ちゃんからすると、最強メンタル計画ちゃんは希望をくれた人で、赤ペン先生はその希望を安全に形にする人なんだろうな
いい解釈
泣く
レス 151〜200
そして企画書は赤くなる
赤は愛
とりあえず結論
・初会合は感動的だった
・最強メンタル計画ちゃんのVRは本当に誰かを救っていた
・新入生ちゃんはめちゃくちゃいい子
・ノートが出た
・スピカさん環境化案が出た
・赤ペン先生が即時対応した
・共同研究の気配
・相乗効果こわい
・でも期待してる
完璧なまとめ
常時発動は禁止
赤ペン先生を大事に
今年の五箇条
読んだ上で「完成後ならよいのだな!」って言う
だめです
たづなさんの許可必須
最終防衛線たづなさん
スピカきゅんは今日も何も知らずに配信するんだろうな
「新学期ですね。新しい環境で頑張る皆さんを応援しています」とか言いそう
言うな
新入生ちゃんと最強メンタル計画ちゃんが同時に燃える
結局スピカきゅんは存在するだけで燃料
希望だからね
希望は熱い
焼かれながら、誰かを照らそうとしてる
急に詩的になるな
でも好き
危険物が生まれない範囲で照らして
赤ペン先生、頼んだ
たづなさん、頼んだ
寮長、頼んだ
理事長、座ってて
草
理事長、座ってて
今年一番大事な指示
新入生ちゃん、ようこそ
ようこそトレセン学園へ
走れるようになってよかったね
最強メンタル計画ちゃん、よかったね
赤ペン先生、頑張って
たづなさん、ごめん
謝罪が早い
でもたぶんかける
春は始まった
尊怖い春が
相乗効果こわい
相乗効果こわい
でも、ちょっとだけ楽しみ
それが一番怖いんだよなあ